愛に恋

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絶望名人カフカの人生論 フランツ・カフカ

 
今日、我々がカフカ作品を手にすることが出来るのはナチスの迫害を逃れた2人のユダヤ人のお蔭らしい。
カフカ自身は死の直前、日記や手紙を含め全ての遺稿を燃やすように遺言していたらしいが、それを預かった親友のブロートは結果的に遺言を無視した。
 
ナチにより「有害図書」の指定を受けていたカフカ文学はプラハ侵攻前夜にブロートのトランクに詰められ脱出に成功。
一方、婚約者だったフェリーツェに送った500通にも上る手紙も彼女のスイス亡命によって難を逃れ、もし二人がゲシュタポの手に落ちていたら20世紀最高の文学と言われる作品は読まれることなく終わってしまったわけだ。
 
カフカ研究の第一人者が池内紀さんだということは知っているが、果たしてカフカはそれほどまでに面白いかというと、どうも苦手な部類で『城』『変身』など、理解力に乏しい私にはよく分らなかった。
だが、ノーベル賞作家など名だたる人がカフカを絶賛している。
 
カフカ作品の多くは未完で終わっているらしいが、バベルの塔に似て、天まで届かせようとしたことに無理があったようで不可能なほど高みを目指した結果だという。
つまり作品を書いていて途方にくれてしまうカフカがそこにあるらしい。
 
しかし本書はカフカ文学の素晴らしさを解き明かしているのではなく、カフカが史上稀にみるネガティブな人だったという紹介で、ピタゴラスの定理にいうところの「悲しいときには悲しい音楽を」のとおり、マイナス思考のカフカ人間性に迫り、失敗し続けて人生の幕を閉じたカフカの人生を探るものになる。
たとえば!
 
将来に向かって歩くことは、僕にはできません
将来に向かってつまづくこと、これはできます
いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです
 
何と言う後ろ向きな発言。
 
バルザックの散歩用のステッキには「私はあらゆる困難を打ち砕く」と刻まれていたという。僕の杖には「あらゆる困難が僕を打ち砕く」
 
ずいぶん遠くまで歩きました
五時間ほど、ひとりで
それでも孤独さが足りない
まったく人通りのない谷間なのですが
それでもさびしさが足りない
 
つまり、自分の弱さに苦しめられ続けていた生涯だったわけで文学以外、上昇志向というものがなく誰よりも痩せ、金儲けの興味はなく菜食主義者で健康のために真冬でも窓を開けたままで寝るほど神経質。
健康に気を遣うあまり結核になってしまうという矛盾。
彼の願望というのがまたおかしい。
 
嫌でたまらない古い独房から、いずれ嫌になるに決まっている新しい独房へ、なんとか移してほしいと懇願する
 
結婚に対する憧れもあったがフェリーツェと2度婚約して何れも破棄している。
著者も書いているが昨今ではポジティブになろうというメッセージが世に氾濫しているがカフカのネガティブさを読んでいると、まんざらネガティブも捨てたもんじゃないと思わせる何かがある。
生前、まったく無名で自ら才能がないと思っていたカフカが20世紀最高の文学者になる!
 
それもナチスの迫害から作品を守った親友ブロートの数十年に渡る努力の賜物ということらしい。
また、大量の日記、書簡などを現在読むことは困難で古本屋で探す以外に方法はないらしい。
復刻したら読んでみたいものだが。
 

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