愛に恋

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さいごの色街 飛田 井上理津子

 
売春防止法の施行は昭和33年3月31日なので当然、私は遊郭に登楼したことはない。
昔は色街などと表現したが、その手の遊びをしなかった男なんていたのだろうか?
啄木は言うに及ばず芥川でさえ広津和郎に拠って、その日の事を書かれている。
しかし、宮沢賢治漱石には或はそれがなかったかも知れない。
まあ、そんなことはどうでもいいが旧赤線地帯に一度だけ入ったことがある。
名古屋の旧中村遊郭だが街を歩いていると、まるで昭和初期にタイムスリップしたような錯覚に捉われる。
 
大正時代、中区大須から移転したものだが、往時の賑わいが偲ばれる風情。
今現在、どのようになっているか知らないが私が行ったのは昭和の50年代。
しかし、本書にある大阪飛田は、昔とはやや形式を変えながらも運営を続けているという。
所詮、男と女がいる限りこの手の商売は無くならない。
日頃通うモスバーガーの向かえにコンビニがあるが、そこで待ち合わせる男女は全てホテル直行、裏手がホテル街で辺りは風俗のメッカ。
女性は必ずお辞儀をし、○○さんですか、と声を掛けている。
 
利用経験のない私は料金のことは分からないが、飛田では、
15分 11000円。
20分 16000円。
30分 21000円。
取り分は親方が4割、女の子5割、曳き子のおばちゃんが1割。
 
売春が無くなる事は永遠にないと思うが、それならいっその事、公認にしてはどうかと思う。
現実に公娼として認められている国もある。
まあ、日本では現実的ではないかも知れないが。
本書は女性が書いただけに面白い。
10数年懸かって出版に漕ぎ付け、まさに取材も体当たり。
一筋縄ではいかない相手との折衝も一度ならず。
 
著者にとっては良くも悪くも魅力的な街だったと言えるのだろうか。
飛田は戦災にも遭わず奇蹟的に残り、いつまでも大事にしたい景観だと思うが、時代の荒波には勝てず閉店、取り壊しの店も多いとか。
哀しきは、どこの遊郭でも遺体を葬る菩提寺などがあったと思うが、苦界の中で息を引き取った無数の遊女たちの物語は誰知ることなく消え去るということか。
 

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