愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

乙女の港 川端康成

 
20歳前後だったと思うが、ひたすら川端康成ばかりを読んでいた時期があった。
しかし、22歳で司馬遼太郎を知ってからというもの、まるでバトンタッチしたかのように川端文学から遠のいてしまった。
以来、もう川端を読むことはあるまいと思っていたら、今まで見たこともない乙女チックな川端作品を本屋で見かけ驚いた。
更に文庫化されたと聞いて何十年ぶりかで川端を読んだが、本来なら敬遠したくなるような女学生のプラトニック・ラブの話し。
 
買ってしまったものは仕方がない。
読み進めていくうちしきりにエスという言葉が出てくる。
意味合いは大正から昭和初期にかけて流行した女学生の風俗で、上級生と下級生が姉妹の契りを結び、カップルとして親しく交わることを言うらしいが、あくまでもプラトニックなもので性的な関係は結ばないものとある。
 
男女共学がない時代の風習かと思われるが、しかし当時の女学生の品行方正さと正しい日本語の使い方、年長者に対して「お姉さま」などと言っているが、現在とはかなり言葉使いも違う。
 
昭和12年当時、少女雑誌に連載されていた『乙女の港』は、まだ学生だった瀬戸内晴美をして夢中にさせるほどの小説だったとか。
挿絵は中原淳一、乙女たるもの熱中せずに済むものかというところだろうか。
しかし如何せん、私がこのような作品を読むには少々歳を取り過ぎた。
これが川端作品でなかったら絶対読まなかったところだ。
 

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