愛に恋

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大正美人伝―林きむ子の生涯 森まゆみ

 
林きむ子とは所謂、大正三美人の一人で林姓は再婚相手の名前。
九条武子、柳原白蓮と並んで世情を賑わした美貌の持ち主だというが、なるほど、写真を見ると品性と知性にも恵まれていた才媛なのだろうか。
義大夫語りの娘で、新橋料亭「浜の家」の養女となり代議士婦人としてサロンの女王とまで言われていた。
「浜の家」と言えば右翼の大物、頭山満杉山茂丸の贔屓先としても知られている。
 
きむ子は多才な女性で芸事百般を修め、神学、仏語、美術、国漢、和歌、乗馬、自転車、柔道なども習得、女性解放運動にも取り組み、まさに賢婦人の誉れ高い女性だったが大正時代のある疑獄事件に夫が関わり拘束されたのを機に家計は傾く。
更に保釈後に夫が狂死。
その後は美人は身を助くとでも言うか、6人の子持ちながら9歳年下の詩人、林柳波と一年以内に再婚。
生涯8人もの子を生している。
 
ともかくも、著者、森まゆみは殊更近代史に詳しい。
本書にしてもそうだが、林きむ子に関わった人の略歴など話しが脇道にそれること甚だしく多彩な人物を登場させている。
中でも頭山満杉山茂丸にはかなりのページ数を割き、まるで明治の政界史を読まされているような錯覚に陥る。
 
とにかく、この人の本はあまり一般向きではない。
まるで敏腕刑事のような調査能力でほとほと舌を巻く。
だが、世間が絶賛するほどの美人となれば一度は拝みたいのが人情。
映像などはないものか。
美人にして芸事に関しては人一倍厳しい女性だったとあるが、明治女の意気地、斯くあらんか。
因みに藤田まことは彼女の甥にあたる。
 

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