美しさと哀しみと 川端康成

 
最近、『文豪はみんな、うつ』という本があることを知った。
まだ、未読だが興味ある題材なのでいずれ読んでみたいと思っているのだが、果たして川端康成がうつだったかどうかは別にして、川端が名作を次々に発表していた昭和30年代、たとえば『眠れる美女』は昭和35年1月から36年11月へかけて。
『古都』は36年10月から37年1月まで雑誌に連載している。
そしてこの『美しさと哀しみと』は36年1月から38年10月にかけて『婦人公論』に連載されたらしい。
 
その川端が『古都』を書く前から多年連用していた眠り薬を甚だしく乱用し『古都』執筆終了後、薬を止めたとたん10日間ほど意識を失ってしまったらしい。
してみると、あの怪しげな名作『眠れる美女』も薬の影響もあるのだろうか。
 
私が川端作品を読みだしたのは彼の死後、おそらく昭和50年ぐらいのことではないかと思うのだが、名作の殆どが新潮文庫から出ているので、中公文庫出版のこの本の存在はまったく知らなかった。
それを古本屋で見つけ購入したわけだが、まずタイトルからして川端が生涯を懸けて書き続けてきたテーマそのものではないかと思う。
 
登場人物はたったの6人。
24年前にわずか17歳の少女、上野音子を妊娠、死産、精神病院送りにしてしまった妻子ある作家の大木年雄。
鎌倉で暮す大木と画家になって京都で暮す音子。
その音子と同性愛的な感情を持って同居する弟子の坂見けい子。
師の過去を知って復讐的な感情に燃えるけい子。
それに嵌っていく大木と大学教授の息子。
 
スリリングな展開は意外な結末に向かって進んでいくが、これがかなり面白い。
それにしても川端文学の白眉はなんと言っても様式美の描写力にあるだろう。
寺や庭、着物、仏像、植物と川端康成が日本の美を書き続けてノーベル賞を貰ったのに頷く。
 
若い頃、なぜ川端文学に手を出したのか、今となってはよく分からないが、失礼ながらこの人、あまり女性にモテるタイプだとは思えない。
がしかし、それにしては女性の心理描写などが上手い。
だから文豪なのだと言われてしまえばそれまでだが、やや的をずらしたように書かれている官能的な描写は心難い筆力で一読の価値ありだ。
 

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