原節子 わたしを語る 貴田庄

 
原節子 わたしを語る』というタイトルだが本人がこれを書いたわけではない。
残されたインタビューや対談の記録から原節子とはどのような女性だったのかに迫るというのが本書の趣旨。
同時代の女優、高峰秀子が多くの著作を残したのに対し、原節子は生前、1冊の本も出していない。
あまり深く考えたことはなかったが二人は性格的にも正反対のタイプだったとか。
 
高峰は女優引退後も講演やテレビと公の場に出ることを厭わなかったが原は現役当時から映画の試写会などで舞台に立つのも断っていたほど徹底して「嫌なものは嫌」と自分自信を貫く性格だったようだ。
また、高峰は映画の中で主題歌なども唄っているが原は大の歌唱嫌い。
ダンス、ラブ・シーンなど男性と絡むようなシーンも苦手。
確かに原の作品には男女の濃密な恋愛を表現するような場面はない。
 
色気がないと言われていたとあるが、品位や知性が邪魔していたのではなかろうか。
個人的にその美貌が冴えわたった映像として『わが青春に悔いなし』の撮影場面をたまたまGHQのカメラマンが撮ったカラービデオが残っているが確かにはち切れんばかりの笑顔を振りまいて走る原節子は美しい。
しかも、彼女は大の読書好きで、こんなことを言っている。
 
「私の読書癖は物凄くこうじて、今では乗物の中でも家でも、スタジオでも、或は道を歩きながら、場合によってはトイレの中でも、あらゆる読物を、あらゆる時間、あらゆる場所で熱心にまた狂的にまで耽読しております」
 
他に好きなものとして散歩、水泳、ビール、麻雀、賭け事など挙げているが、なかなか人間味臭い魅力的なところもあったようだ。
戦後を代表する大女優といえばもちろん原と高峰だが二人の共演作は、これまで見たことがない。
戦前、戦中には何度も共演しているらしく一度、見たいものだ。
ランク付けでは、その主演料から見ると原の方が上位で今の金額に換算すると1本、5000万円ほどだとか。
 
巷間言われている小津監督の死が引退に至った原因ということに関して、それを要因のひとつとして挙げているが、彼女自信、女優業を決して好いていたわけでなく、潮時を狙っていた時に小津監督の死が重なり、それが引退を早めたようだ。
いずれにしても長い隠遁生活の中、原節子という人は以前の同僚や仲間が先立つのを、どのような感慨で思い過ごしていたのだろうか。
 
生きながらにして伝説の人物となってしまった原節子
唯一、高峰秀子との共通点は共に子供を残さなかったぐらいか。
聡明な人だけに自叙伝の1冊ぐらいは残してほしかったと思うのだが。
最後に、彼女の主演映画というと、今日、小津作品ばかりがクローズアップされているが、実は相当本数の駄作にも出演しているらしい。
 

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