愛に恋

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世界の[下半身]経済のカラクリ 門倉貴史

 
国際社会は現在、性産業に対して二つの大きな問題を抱えている。
ひとつはポルノは解禁した方が良いのかという問題。
北欧のように子供の頃から性教育をすることによって望まない妊娠や性に対する精神的な免疫力を早い時期から養う。
 
二つ目は、セックス・ワーカー、つまり売春は禁止した方がよいのかという難問。
人類史上、絶えることのないこの産業は古代より宗教や価値観などによって考え方も様々、寧ろ、セックスを広く奨励し堂々と公娼制度を取り入れていた時代もあるばかりか、今日でも国によっては公娼が認められているところもある。
 
つまりこういうことだ。
禁酒法時代にマフィアが勢力を伸ばしたように法律で禁止されれば、本来、酒やセックスは人間の欲求に根差しているものであるからして、当然、そこには闇組織が介在してくる。
なら、いっそ、ポルノも売春も解禁してはどうかという意見もある。
事実、発展途上国では売春は外貨獲得の手段としては断トツ、国が認可すれば税収もアップし、売春婦も労働者として認められ会社としては保険は勿論、福利厚生施設も完備するという事態にもなってくるというわけだ。
 
本来、日本の売春防止法は貧しい家の女性が身売りによって搾取されるのを防ぐための法律であった。
しかし現在、この法律は女性保護に役立っているのか?
自由意志で働く女性が多い現在では労働者として充分な保護を受けることが出来ないと著者は主張する。
 
日本では考えられないが売春が合法化されているドイツでは「セックス税」なるものが導入されているとか。
また、一般的にセックス産業は大規模なイベント、例えばオリンピックやワールドカップなどがあると売春婦も大挙してやって来るらしい。
話しをドイツに戻すがボン市では路上に「売春メーター」なるものも設置してある。
つまり駐車料金と同じというわけだ。
この場所を借りて売春をしますからねと言う許可書を発行してもらう。
 
また、古代ギリシャでは売春は医者や弁護士と変わらない職業とされてきたとある。
近年、ギリシャ危機なんていう問題があったが、ギリシャも売春は合法で売り上げはGDPに加算されている。
 
フランスの場合は18世紀、ルイ15世の公妾であったポンパドール夫人が国王の性欲を満たすためにフォンテンブローの森に「鹿の宿」という娼館を作ったことは有名だが、当時のフランスは欧州の中でも有数な売春天国だった。
現在は厳しい規則はあるが売春は公認されている。
 
オーストリアでは売春宿が株式上場にランク付けされた例もあるらしい。
逆にイタリアのように「売春禁止法」が制定されると職を失った売春婦たちが各地で猛烈な抗議運動を展開する。
男性ではなく女性の方がである。
 
こうして見てくると確かに売春は必要悪である。
規制緩和した方がいいのか強化した方がいいのか、難しい判断だが人間の本能を抑圧し過ぎるとアングラ化してカポネの到来を招いてしまう恐れもあるが逆に人身売買の温床にもなっている。
 
世界のセックス・センターと呼ばれるタイ。
海外に分散する中南米の女性や東南アジアの女性。
私の地元でも巨大なコネクションがあるのか多国籍の女性たちが必要に男に付き纏っている。
 
しかしこの問題はどう転んでもイタチごっこで、改正しても改正しても法の網を潜る方法を必ず見つけてくる。
つまり、性風俗は無くならないということだ。
ある面、当局も容認していることは国民も知っている。
なら、いっそのこと解禁したらどうなのか。
 
結局、この本は世界の性産業の必然性と矛盾性を追求して已まない。
売春婦も裏ビデオも、その存在を国民は知っている。
なら、どうしたら良いのか。
少なくとも日本では不毛の論争になりそうなこの問題を正面から描いた本だったと言えるだろうか。
 
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