愛に恋

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こちらあみ子 今村夏子

 
文学作品、特に感動小説などと言われるものは読む年齢によって受け止め方も違ってくるのだろうか。
昔、『二十四の瞳』を読んで感動のあまり小豆島まで行ってしまったことがあるが、
60を超えた今、初めて『二十四の瞳』を読んだとしたら果たしてあれほどの感動を得ることが出来るかどうか判断しかねる。
 
今回の本、『こちらあみ子』とは一風変わったタイトルだが生まれてくるはずだった赤ちゃんと将来、会話するつもりで買って貰ったトランシーバーでの応答を意味している。
家庭構成は父と継母、そして兄とあみ子なのだが生まれて来た子は死産だった。
継母は書道教室の先生、一緒に登下校をしてくれ兄、憧れの同級生のり君。
しかし、一家の異変は突然やって来る。
 
死産を切っ掛けに継母は鬱病になり兄は暴走族となって家には寄り付かなくなる。
変わり行く家庭環境と学校生活をあみ子の無垢な視線で鮮やかに描き出している作品として第26回太宰治賞と第24回三島由紀夫賞受賞を同時受賞している。
読み手は若い人が多いのか評価もかなり高い。
 
何がそれほどまでにこの作品を持ち上げているのか?
家庭崩壊やいじめがテーマではなく、ひとり、あみ子が捉えている視点が読者を惹き付けているのだろう。
憧れののり君に「好きじゃ」と言った瞬間に顔面を殴られ前歯3本を折られる。
しかし、差し歯をするわけでもなく成長していくあみ子。
 
ストーリーの卓越さではなく子供の視点に立つ純な繊細さが批評家の採点を集めた結果の受賞ではなかったかと思うのだが。
 
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