愛に恋

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宇喜多の捨て嫁 木下昌輝


下剋上と聞いて誰を思い浮かべるかと言えば、まず、斉藤道三と毛利元就だろうか。
その道三、かれこれ40年程前のこと、首が埋まっているという道三塚を見に行ったことがある。
長良川河畔での戦いで息子の義龍に破れ首を取られた。
対する元就は生涯を戦に明け暮れたにも関わらず、波乱に満ちた75年の人生を無事努め、病で没した。
戦国時代、並の知略では到底生き残ることが出来ないことを元就の人生が教えているようにも思う。
 
さて、今回の本、『宇喜多の捨て嫁』とは実にいいタイトルだと思って購入した。
権謀術数を駆使して戦国時代を駆け抜けた宇喜多直家を主人公に裏切りと策謀にまみれた男の生涯を六編の短編として複雑に絡ませながら描き、乱世に於いて滅亡していった家がどれほど多いかを考えさせられる1冊だった。
 
主家は勿論、家臣の離反や裏切り、または肉親との死闘。
これではいつ寝首を搔かれるか、現代人では到底務まる仕事ではない。
家が滅びるということは自分一人の死に止まらず、女子供にも類を及ぼす。
また、裏切りに対してはこんなことが書かれている。
 
「反逆者は三族皆殺しが、定法であろう」
 
親、子供諸共殺害ということか!
これでは堪らない。
荒木村重の謀叛が信長の怒りを買い、一族郎党がどのような悲惨な運命を辿ったか歴史が証明している。
怖ろしきは、狡兎死して走狗烹らるの譬えで、必要なときは重宝がられるが、用がなくなればあっさり捨てられる。
ともあれ、戦国時代というのは無慈悲で残酷、その処刑方法も言語に絶する。
 
時にこの本、是非にもお薦めとは言わないが、この作者、実によく勉強していると思う。
時代考証など驚くほどしっかりしたものだ。
例えばこんな言葉が出てくる。
 
「五逆」
 
親殺しのことだそうだが、初めて聞いた。
略歴を見ると、近畿大学理工学部建築学科卒業、凡そ文学とは縁のない学問のように思うが、どうしたわけか小説家の道へ。
 
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