愛に恋

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アルフレッド・ドレフュス「獄中日記」

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南米仏領ギニア・デヴィルズ島と聞いてピンときた!
映画『パピヨン』の舞台となった悪名高いあの島だ。
73年、スティーブ・マックイーン主演映画のラストシーンが蘇る。
ナポレオン3世第二帝政期、政治犯を収容した悪魔島で、終身禁固刑のドレフュス大尉はあの島に送られたのか。
 
思いも掛けず手に入れたこの本、ドレフュス事件で名高い本人が書いた「獄中日記」なるものがあるなど考えてもみなかった。
奥付を見ると昭和38年4月25日、筑摩書房発行とある。
かなり古いが出会ってしまっては止むおえず買うしかない。
 
今更ここでドレフュス事件を語る紙数もないが、1894年、フランス陸軍参謀本部付のユダヤ系フランス人アルフレッド・ドレフュス大尉がスパイ容疑で逮捕された冤罪事件で、その後、エミール・ゾラが大統領に公開質問状を出したことで19世紀末のフランス政界を揺るがす大事件になった。
日本では大佛次郎が昭和5年に事件を紹介したことで有名になったが、それを踏まえて以前、『ドレフュス事件エミール・ゾラ 』なる本を読んでみたが、あまり頭に入らなかった。
 
軍人にとっては最悪な国家反逆罪による逮捕。
しかも冤罪とあっては、悶死するほどの屈辱だったことだろう。
劣悪な環境の中での独房生活、最高気温は45度とある。
食料不足、急激な環境変化から起こる体調不良とストレス。
心臓発作、高熱、胃痙攣、水漏れ、虫の大群と私なら精神を病み、急激にやせ細り、自ら死を願うこと甚だしと思うがドレフュス大尉は違った。
 
陸軍大臣に再審請求を願い、ひたすら、自分を今日の環境へ陥れた真犯人の捜査を願ってやまず、更には、愛する妻と二人の子供の為に強靭なる精神で如何なる仕打ちにも耐えた。
 
本書には妻との往復書簡や日記が載っているが、固い絆と愛で何とかこの試練を乗り超えて行こうという強い決意が読み取れる。
だが手紙は常に検閲され、思うように届かないもどかしさと苛立ちも随所に見られる。
このような状況下では互いを励ますのは手紙だけ。
 
位階勲等、全てを剥奪され国家反逆罪の汚名を着せられ恥辱に塗れながら死ねるかという強い精神力あってこそ耐えることの出来た5年間であった。
妻の努力の甲斐あってか国内世論も一変し、晴れて汚名返上となるドレフュス大尉の奇跡の生還を物語る貴重な日記だが、この手の本は岩波文庫で復刊した方がよいと思うがどうだろう。
現在では読みたくとも読む手立てが失われている分、残念に思えてならない。
 
或は講談社の学術文庫でもいいではないか。
ひとつ、出版業界の人にご再考願ひたいものだ。
 
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