私にとっては少し難しい本だった。
美術史は専門外だがゴヤが生きた時代には一方ならぬ興味がある。
ゴヤは47歳以降82歳で死ぬまで聾者だったとあるが、その間、どのような思いで生きていたのだろうか。
戦乱と殺戮のスペインをどう生きたか興味は増すばかりだが、しかし、ゴヤとその時代を学ぶということは少々荷が重い。
ところで有名な『我が子を貪り喰らうサトゥルヌス』は当初、明らかに勃起したペニスを備えていたとあるが、そのペニスはどうなったのだろうか?
修正したということか。
また、片手でパイプを吸いながら、もう一方の手でペニスを掴んでいる男の絵。
或は、二人の女が、自慰をする男を見て笑っている絵もあるようだが、ゴヤは何故、それほどペニスに拘ったろう?
ゴヤが聾者になった原因はよく判っていないようだが、常々、「頭の中に水が溜まっているような感じがする」と言っていたらしい。
そして幻聴、眩暈などから気を失い、1792年、47歳の時に病状は一気に悪化。
しかし、彼の人生はまだまだ長い。
1807年、ナポレオン軍がイベリア半島に上陸、無差別な殺戮と恐るべき混沌の時代。その辺りはもう少し勉強してみたい。
ところで、この本の読み辛さについて「訳者あとがき」にこのようにある。
テーマとする人物の生涯と、その人物を取り巻く歴史状況に、自分自身の回想、記憶、体験などを何の矛盾もなく織り込み、有機的に構成する。
とあるが、ここが難しい。
それらのことを著者自身、このように言っている。
かつて人間が住んでいた場所に立つと、突如、彼らの息吹が、まるで眼前に展開するかのように、活き活きと感じ取れることがある
そして訳者はこう結論付ける。
この年老いた画家を、自分の親しい旧友として「思い出し」、そして自分の見たままの彼を、活き活きと描き出す。のみならず、自ら彼の中に入り込み、彼の目を通して外の世界を見、果ては、怪物に変じた後の彼が閉じ込められていた、沈黙の牢獄を共有することさえできるのだ。
うふ、難しい!
とにかく、訳者が言っているようにゴヤは怪物である。
倦むことを知らず、衰えることを知らず、目の前にあるものをひたすら貪欲に吞み込んでは咀嚼し、消化し、そして自在に吐き出す。
凶暴な欲情、戦争の狂気、歴史の無慈悲、その真実の姿を暴き出すゴヤ。
本への理解度は薄かったが、ゴヤへの興味を引き立たせる1冊になったことは間違いない。
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