愛に恋

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黒の画家フランシスコ・ゴヤ ジュリア・ブラックバーン

 

私にとっては少し難しい本だった。
美術史は専門外だがゴヤが生きた時代には一方ならぬ興味がある。
スペインの独立戦争などをどう見ていたのか、ゴヤに付いてはもっと勉強したいという欲求が湧いてきたが果てさて今後どうするか。
 
ゴヤは47歳以降82歳で死ぬまで聾者だったとあるが、その間、どのような思いで生きていたのだろうか。
戦乱と殺戮のスペインをどう生きたか興味は増すばかりだが、しかし、ゴヤとその時代を学ぶということは少々荷が重い。
 
ところで有名な『我が子を貪り喰らうサトゥルヌス』は当初、明らかに勃起したペニスを備えていたとあるが、そのペニスはどうなったのだろうか?
修正したということか。
また、片手でパイプを吸いながら、もう一方の手でペニスを掴んでいる男の絵。
或は、二人の女が、自慰をする男を見て笑っている絵もあるようだが、ゴヤは何故、それほどペニスに拘ったろう?
 
詳しくは知らないのだがゴヤ肖像画は絶大な人気を誇り、衣服の材質、宝石の価値、勲章の重みや煌めきまでもが表現出来たとあるから凄い。
 
ゴヤが聾者になった原因はよく判っていないようだが、常々、「頭の中に水が溜まっているような感じがする」と言っていたらしい。
そして幻聴、眩暈などから気を失い、1792年、47歳の時に病状は一気に悪化。
しかし、彼の人生はまだまだ長い。
1807年、ナポレオン軍がイベリア半島に上陸、無差別な殺戮と恐るべき混沌の時代。その辺りはもう少し勉強してみたい。
 
ところで、この本の読み辛さについて「訳者あとがき」にこのようにある。
 
テーマとする人物の生涯と、その人物を取り巻く歴史状況に、自分自身の回想、記憶、体験などを何の矛盾もなく織り込み、有機的に構成する。
 
とあるが、ここが難しい。
ゴヤの生まれ、歩き、住み、死んだ場所に赴き、まるで現在と過去を行き来するような語り部でどうも理解に苦しんだ。
それらのことを著者自身、このように言っている。
 
かつて人間が住んでいた場所に立つと、突如、彼らの息吹が、まるで眼前に展開するかのように、活き活きと感じ取れることがある
 
そして訳者はこう結論付ける。
 
この年老いた画家を、自分の親しい旧友として「思い出し」、そして自分の見たままの彼を、活き活きと描き出す。のみならず、自ら彼の中に入り込み、彼の目を通して外の世界を見、果ては、怪物に変じた後の彼が閉じ込められていた、沈黙の牢獄を共有することさえできるのだ。
 
うふ、難しい!
とにかく、訳者が言っているようにゴヤは怪物である。
倦むことを知らず、衰えることを知らず、目の前にあるものをひたすら貪欲に吞み込んでは咀嚼し、消化し、そして自在に吐き出す。
 
凶暴な欲情、戦争の狂気、歴史の無慈悲、その真実の姿を暴き出すゴヤ
本への理解度は薄かったが、ゴヤへの興味を引き立たせる1冊になったことは間違いない。
 
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