愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

評伝・伝記・自伝・追悼文(読書録)

探美の夜 中河与一

本書の発行は1957/1/1と大変古いもので、初版本は一度、古書店で見たことがあるが、少し値が張ったので買わなかったが以前、ある古書市で装いも新たに再販されていたのを偶然目にし、私にしたら殆ど奇跡に近い発見だった。 谷崎潤一郎の女性遍歴を扱った自伝…

外交回想録 重光葵

でかした、これで東郷茂徳が獄中で書いた『時代の一面 大戦外交の手記』と合わせて大戦期で両外務大臣の手記を読んだことになる。 ただ重光には著作が沢山あり、ぼちぼち読んでいきたいが何分値段が高い。 本書は第一次大戦頃から外務大臣になる直前あたりま…

哀しすぎるぞ、ロッパ 古川緑波日記と消えた昭和  山本 一生

最近、三浦友和や山口百恵を知らない20代の女の子と話をしたが、なら、古川ロッパなんて誰が知ってるねんってなもんだろうか。 どうだろう、80代以上ならよく知っているだろうか。 戦前、戦中には大変な人気者だったらしいが、私が生まれ育った頃には、その…

伊藤律 陰の昭和史 毎日新聞社編

この名前と顔は、ここ数十年間忘れたことがない。 あれはいつの事だったか、調べてみると1980年9月3日のことらしい。 つまり、ちょうど40年前になる。 突然、中国から伊藤律なる見知らぬ男が帰国して国内は騒然。 当時、20代の私は、この怪しげな人物に関し…

ドビュッシー最後の一年  青柳 いづみこ

天才的大作曲家というのは巨万の富を築いたかと思いきや、そうでもないらしい。 ある石炭商に宛てた手紙には、 「私の小さな娘は、あなたの手紙に狂気していました。我々の時代には、少女たちは人形よりも石炭の袋を好むものです」「気温は下がり、我が家に…

強父論 阿川佐和子

調べてみるに、阿川弘之氏は1920年(大正9年)12月24日生まれだとか。 戦後、ポツダム海軍大尉として博多に帰還している。 短気なところが私の父と似ているからして、何年生まれか調べたのだが、特別他意は無い。 ただ、私の父は「口で言うより手の方が早い…

わが父ルノワール ジャン・ルノワール

以前にも何かで書いたが、みすず書房などは私みたいな外様が安易に手を出してはいけない本なのだ。 労力、根気、努力、忍耐、読解力など総合的な能力がないとアリ地獄に嵌ったようで、なかなか抜けきれず日数だけが浪費されていく。 もうとにかく長い、長い…

溝口健二を愛した女―女流映画監督第一号 坂根田鶴子の生涯 大西悦子

『溝口健二を愛した女』なんて言うから、例に拠って不倫話でも始まるのかなと思いきや、豈図らんや、全く不純な関係などないまま終わっていくストーリーだった。 まず、坂根田鶴子という、この聞いたことのない女性は明治37年12月7日、坂根清一と志げの長女…

不貞の季節 団 鬼六

『薔薇族』だったか何だったか、確か二種類ほどSM雑誌があるのは知っていたが、その手の本は一度も買ったことがない。 団 鬼六、宇能鴻一郎と有名なエロ・SM作家がいたが名前しか知らなかった。 本屋に行くと、官能小説のようなコーナーもあって、立ち読…

夜よ、さようなら―パリ娼婦の自伝 ジャンヌ・コルドリエ

本書は1979年の発売らしいが、まあなんとも文字の小さい事。 さらに上下二段組みで今月は殆どこの本で苦労したと言ってもいい。 毎年、年初に当たって敢えて手古摺るような本で、今年もやるぞと意気込むのだが、今回はほとほと参った。 故に最近、読書感想文…

ゆきてかえらぬ  瀬戸内晴美

本作は5編からなる実名小説で順に。 ・ゆきてかえらぬ ・三鷹下連雀 ・霧の花 夢二秘帖 ・春への旅 ・鸚鵡 「ゆきてかえらぬ」は一代で巨万の富を築き「木綿王」と呼ばれた薩摩治兵衛の孫として生まれ、10年間で約600億円使ったという使ったというバロン薩摩…

駱駝の瘤にまたがって―三好達治伝 石原八束

三好達治がどれだけ偉大な詩人で教養人あったか、知人友人がそれぞれ賞賛して已まない、言ってみればそれに尽きる本だった。 しかし、私一人が蚊帳の外。 どうも文体が難く読みづらい。 これは石原八束氏の本書にも言えることで、一般には使わない漢字や見た…

花は桜 魚は鯛 谷崎潤一郎の食と美 渡辺たをり

これは、京都にある画家橋本関雪のお屋敷で、先年行った折り撮って来たものだが、明治16年11月10日生、昭和20年2月26日没とあるから、敗戦を知らずに逝去しているわけで、何だかややこしい話になるが、著者渡辺たをりという女性は、関雪の曾孫で谷崎の義理の…

ゴヤ 4 運命・黒い絵 堀田善衞

扨て、いよいよ最終巻だが、本当に長くかかってしまった。 この巻では「黒い絵」と言われるデッサンについて紙数を割いているが、ゴヤのデッサンは、その画帳に自らつけた番号によると313枚あった筈で、現在その存在が確認されている物は271枚、だが現物を見…

ゴヤ 3 巨人の影に 堀田善衞

遣って来ました第三巻です。 先ずもって、私を驚かせたのは61ページにあるこの記述、ある結婚式に出席したしていた家族の中に、17歳のレオカーディア・ソリーリャ・ガラルサという極めて美しい少女がいた。 レオカーディアは直ぐイシードロ・ウェイスという…

ゴヤ 2 マドリード・砂漠と緑  堀田 善衞

扨て、第二巻だが、先ずメモリたいことから書いていく。 今日ではすでに完全に忘れさられてしまったことであるが、宗教画を描く画家は、細心な注意を払って宗教図像学上のもろもろの約束を守らなければならなかったのである。慎重な上にも慎重でなければなら…

ゴヤ 1 スペイン・光と影 堀田善衞

以前から、どうも苦手意識のある作家に辻邦生と、この堀田善衞を自意識的に挙げていたが、ブックオフで『ゴヤ 全4巻』があるのを見て衝動買いをしたままお蔵入りさせていた。 然し、いつまでも棚の肥やしにしているわけにもいかず、どっこらしょと重い腰を上…

サラ・ベルナールの一生 本庄桂輔

REJANE - SARAH BERNHARDT - LUCIEN GUITRY. PARIS 1910. サラ・ベルナールの映像は何本か残っているが、これを見れば分るように、彼女はやや脚を引きずるように歩いている。 これは、高所から衝立の後ろに落ちる場面があった時、裏方の人がクッションの設定…

二つの絵 小穴隆一

森鴎外の『興津弥五右衛門の遺書』は乃木将軍の殉死に衝撃をうけて書かれた作品だが、確かに鴎外ならずとも興味のある事件に違いない。 私は渡辺淳一の『静寂の声』で殉死に至る経緯を知ったが、著名人の自殺には殊の外詳細を知りたくなるもので、中でも作家…

ロレンスを愛した女たち 中村佐喜子

まったくどうも『チャタレイ夫人の恋人』を読んでもいないのに、D・H ロレンスの伝記を読んでどうするの、なんていうもんです。 故に、彼が天才かどうか判断する材料を持ち合わせていないというのが正直な感想。 ともすればこの作品の性的描写と、邦訳の出版…

女ひとり ミヤコ蝶々

『夫婦善哉』を調べてみると、1955年6月13日から1975年9月27日の長きに渡って朝日放送系列で放映され、テレビ放送が始まったのは1963年8月2日で、それ以前はラジオ放送だったらしい。 私が見ていた頃は小学生だったから60年代ということになるが『唄子・啓助…

夢二と久允:二人の渡米とその明暗 逸見久美

翁 久允(おきな きゅういん)などという作家の名をこれまで聞いたことがないが、竹久夢二と深く携わった人物だとか。 著者の逸見久美は久允の娘さんで日本近代文学研究者、現在92歳。 本書は2016年発行とあるが、先日の阪神古書ノ市で、この際だからと籠に…

紅梅 津村節子

吉村昭さんが亡くなったのは平成18年7月31日。 私にとっては突然の訃報で驚いた。 記録文学の第一人者として数々の名作を世に送り出し、私も愛読者のひとりとして本当にお世話になった。 以下、ざっと読んだ本を列記してみると。 関東大震災 冬の鷹 ふぉん・…

祖父東條英機「一切語るなかれ」 東條由布子

著者、 東條由布子とは東條英樹の孫になるわけだが、その孫が「一切語るなかれ」と言われ続けてきた禁を破ったことになるのだろうか。 これは勇気のいったことだろう。 もちろん外に向かってよりは東條家に対しての問題で、その点、心の葛藤など気になるとこ…

文豪 松本清張

何とも重たい本だった。 小説ではなく評伝と言ったほうがいい。 構成は三作に分かれ、第一章は「行者真髄」として坪内逍遥の死と妻を巡る異説という内容になっているが、これがかなり苦労した。 坪内逍遥は肺炎が原因で死んだらしいが、この本では消極的な自…

生きて行く私 宇野千代

人生此の方、いろいろな女性に出会って来たが、宇野千代のような豪快な女に巡り合ったことはない。 4回の結婚歴、生涯で家を13軒も建てた細腕繁盛記とでもいうような自叙伝的な本。 思い立ったが吉日とは将に彼女のためにあるような言葉だ。 例えばこんな場…

中原中也との愛 ゆきてかへらぬ 長谷川泰子

文壇史上によく言われる中原中也、小林秀雄と長谷川泰子の三角関係とはどんな経緯を辿ったものだったのか一度読んでみたかった。 本書は昭和49年初版で角川ソフィア文庫が平成18年に再販したものだが、語っているのは当事者の長谷川泰子本人である。 履歴書…

朔太郎とおだまきの花 萩原葉子

「天才ゆえの傲慢は許容する、というのが、まず文明社会の不文律なのである」 と言った人がいるが朔太郎は自分のことをこのように言っている。 「不遇な季節はずれの天才」 この本は簡単に言えば、萩原家が崩壊していく様を長女萩原葉子が比較的簡略化して…

太宰よ! 45人の追悼文集: さよならの言葉にかえて

本書の感想文を書くにあたって、書棚にある太宰関係の本を集めてみた。 太宰が書いた作品は入れてない。 つまり、また太宰か、ということになる。 そう、また太宰なのだ! それも45人の追悼文で、太宰の交友関係の広さを窺い知れるものになっている。 Ⅰ太宰…

オスカー・ワイルド 「犯罪者」にして芸術家 宮崎かずみ

オスカー・ワイルドほど、その生涯が作品としてなり得る生き様も珍しい。 時代の寵児にして破天荒な一生、イギリス社会の規範に反する行いと金銭感覚の欠如。 エロスなくしては語ることの出来ない、この厄介な男の人生を女性が書くというところにも興味を引…