居眠り狂志郎の遅読の薦め

喰う寝る読むだけの素浪人です

評伝・伝記・自伝

風雲回顧録 岡本柳之介

明治45年刊行の本だけあってさすがに読み辛い。 著者、岡本柳之助とは明治11年の竹橋事件や同28年の閔妃暗殺事件クーデターの首謀者として名高いが、本人はそのあたりついてはあまり語っていない。 紀州人で陸奥宗光の後輩になり60歳で上海で客死。 復刻本好…

残夢 大逆事件を生き抜いた坂本清馬の生涯 鎌田 慧

坂本清馬という人の名は諸々の本で一度ならず読んだことがあったのだろうが、はっきり記憶に留めていなかった。 それ以上に大逆事件で有罪になった24名中12名が処刑され終身刑に減刑された12名のその後については全く知らずにいた。 本書は、この坂本清馬が…

映画道中無我夢中 浦辺粂子の女優一代記

あれは昭和60年の夏だったと思う。 仕事で伊豆は下田の駅に降り立った時、左手に小高い山を見つつ、実にいい所に来たものだと感嘆したものだった。 幕末以来の、この歴史深い街に一度は行ってみたいと思っていたが、まさか仕事で来るとは予想だにしていなか…

子規、最後の八年 関川夏央

なんとか読み切ったけど疲れた。 それにしても子規の晩年はあまりにも哀しい。 絶叫、号泣、正岡子規と言ったところだろうか。 「試みに我枕もとに若干の毒薬を置け。而して余が之を飲むか飲まぬかを見よ」 想像を絶する痛みの中でよくも耐えて書き続けたも…

小説 永井荷風 小島政二郎

小島政二郎とは芥川時代の人だが平成の世まで生き、満百歳で没した文壇きっての長者だ。 この本が書かれたのは昭和47年とあるが、以来、約30年、永井家の許可が下りず長い間、日の目を見なかった作らしい。 それもそのはず、著者は大の荷風崇拝者でありなが…

寺田寅彦は忘れた頃にやって来る 松本 哉

まず、寺田寅彦と言えば「天災は忘れた頃にやって来る」という格言を残したことで有名だが、私の知っている寺田寅彦とは、その程度でしかなく、他に、漱石門下の人で、随筆「柿の種」を著したことぐらいかしか知らない。 特段、寺田寅彦に興味があったわけで…

談志が死んだ 立川談四楼

相撲のことならともかく、落語となると全く無知な私だが、とにかくタイトルが気になり、立川談志とは如何なる人だったか、一度、読んでみようと手に取ってはみたが、やはり素人目には簡単とは言えない本だった。 内容がというわけではなく、登場人物がまず分…

自伝 若き日の狂詩曲 山田耕筰

これは山田耕筰自らが書いた自伝だが、どういうわけかベルリン留学から帰国した1914年で終わっている。 耕筰は明治19年生まれで、その生い立ちを読んでいて少し驚いた。 勿論、私とは全く違う世代だが晩年の10年程、この世で重なる時期がある。 出自は母の再…

ドストエフスキー伝

まあ、はっきり言って疲労困憊。 736ページという大著もさることながら人名がロシア語とあっては読み辛い。 しかしながら我が町関西ではまず以って見つける事の出来ない本、それを態々、神保町まで行って買ったとあらば解っても分からなくても意地でも読み通…

石原莞爾 マッカーサーが一番恐れた日本人 早瀬利之

かれこれ20年ぐらい昔になるだろうか。 NHKスペシャルで張学良を特集し、何と本人が登場したから驚いた。 まるで浦島太郎に遭遇したような気持ちだったが、キャスターのインタビューに満100歳を迎えた学良は矍鑠とした風貌で記憶も正しく受け応え。 この歴史…

血盟団事件―井上日召の生涯 岡村青

自分で選んどいて何だが、まったくストレスの溜まる本だった。 昭和初期の歴史書には必ずと言っていいほど登場する血盟団事件と井上日召。 とにかく、この人物を紐解くには少なくとも大正期の米騒動から五・一五事件までの世相を知る必要がある。 私にとって…

海軍大将加藤友三郎と軍縮時代 工藤美知尋

明治日本では薩摩の海軍、長州の陸軍などと言われるが、日清戦争時の内閣と陸海軍の主要人事を見ると以下の如くになる。 総理伊藤博文(長)外務陸奥宗光(紀州)。 陸軍は陸相大山巌(薩)次官児玉源太郎(長)川上操六(薩)山縣有朋(長) 野津道貫(薩)…

よみがえる 松岡洋右 福井雄三

東京裁判の公判中、検事が東條英機に対しこんな質問をする場面がある。 「貴方は、弐キ参スケという言葉を知っているか?」 「はい、知っています」 戦前、弐キ参スケと言えばあまりいい印象が無かったようだ。 東條英機 関東軍参謀長 星野直樹 国務院総務長…

芸術家たちの秘めた恋 メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代 中野京子

思うに19世紀に現れた天才たちにとって音楽家ほど職業として激務なものもなかろう。 例えば小説家は日々、書斎でものを書き完成したら出版社に持っていけばいい。 画家はアトリエで作業し展覧会を開く、勿論、野外でのスケッチもあるが。 みなが家に籠ってい…

村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝 栗原康

世に言う甘粕事件を知るには数人の著名人の経歴も一応知っておかなければならない。 第一に大杉栄、そして甘粕正彦憲兵大尉、伊藤野枝、神近市子、辻潤、平塚らいてう 荒畑寒村、山川均、堺利彦などだろうか。 中でも大杉と甘粕に関する研究書は多い。 確か…

ルイズ―父に貰いし名は 松下竜一

一代の風雲児といわれた大杉栄と伊藤野枝が殺害されて90年余。 大杉38歳、野枝は28歳という短い生涯だった。 現在、二人の名がどれほど認知されているか知らないが、私が彼らの名に初めて出会ったのは、おそらく昭和47年頃ではないかと記憶する。 その後、一…

心淋しき巨人 東郷青児 田中穣

これを読むと、美術界に於ける東郷青児の評価は芳しくない。 しかし、著者は彼を擁護する為にこれを書いたのか。 「東郷という男は、本当は、美術界で言われるような悪党ではないのかもしれない」 が、東郷を取り巻く環境は名声こそ二科会の帝王として高い地…

殉愛 原節子と小津安二郎 西村雄一郎

本来なら『純愛』と書くのが通常だが敢えて『殉愛』と表記するところに意味深なもを感じる。 並々ならぬプラトニックな愛が存在するかのようなタイトルだが、果たして本当のところはどうなんだろうか。 殉愛とは愛に殉ずるということからして、余程深い思い…

ゲーテさん こんばんは 池内紀

文豪ゲーテなんて知らないもんね~! ショーペンハウアー、カント、パスカル、シラー、ハイネ、な~んにも解りません。 だから、私も訪ねてみたくなった。 「ゲーテさん こんばんは」 そして、話しを訊いてみた。 だが、やっぱり解らなかった。 ただ、天才は…

不屈の横綱 小説 千代の富士 大下英治

あれは、いつの事だったか? 30歳を少し出た頃だと記憶するが、その日、名古屋栄町のとあるホテルのラウンジでコーヒーをひとり飲んでいた。入店した時には気付かなかったが隣の席に大鵬親方が座っているのを見て驚いた。お連れさんが二人、おそらく奥さんと…

危機の外相 東郷茂徳 阿部牧郎

書棚を見ている。 外務大臣経験者の本を過去、何冊読んだか? 陸奥宗光 大隈重信 加藤高明 小村寿太郎 幣原喜重郎 犬養毅 斎藤実 広田弘毅 野村吉三郎 松岡洋右 東郷茂徳 重光葵。 他に首相が一時、兼任している場合もあるので。 伊藤博文 西園寺公望 山本権…