居眠り狂志郎の遅読の薦め

喰う寝る読むだけの素浪人です

評伝・伝記

石原莞爾 マッカーサーが一番恐れた日本人 早瀬利之

かれこれ20年ぐらい昔になるだろうか。 NHKスペシャルで張学良を特集し、何と本人が登場したから驚いた。 まるで浦島太郎に遭遇したような気持ちだったが、キャスターのインタビューに満100歳を迎えた学良は矍鑠とした風貌で記憶も正しく受け応え。 この歴史…

血盟団事件―井上日召の生涯 岡村青

自分で選んどいて何だが、まったくストレスの溜まる本だった。 昭和初期の歴史書には必ずと言っていいほど登場する血盟団事件と井上日召。 とにかく、この人物を紐解くには少なくとも大正期の米騒動から五・一五事件までの世相を知る必要がある。 私にとって…

海軍大将加藤友三郎と軍縮時代 工藤美知尋

明治日本では薩摩の海軍、長州の陸軍などと言われるが、日清戦争時の内閣と陸海軍の主要人事を見ると以下の如くになる。 総理伊藤博文(長)外務陸奥宗光(紀州)。 陸軍は陸相大山巌(薩)次官児玉源太郎(長)川上操六(薩)山縣有朋(長) 野津道貫(薩)…

SHONAN逍遙―文豪たちが愛した湘南 桝田るみ子

以前泊まった藤沢の宿で貰ったマップに明治以降、如何に多くの著名人がこの辺り一帯に別荘、または家屋敷を構えていたか、その多さを知って驚いた。 広田元首相の妻静子さんが自害した広田家別邸、芥川、白樺派の逗留地、東屋などは鵠沼にあり、茅ヶ崎には団…

よみがえる 松岡洋右 福井雄三

東京裁判の公判中、検事が東條英機に対しこんな質問をする場面がある。 「貴方は、弐キ参スケという言葉を知っているか?」 「はい、知っています」 戦前、弐キ参スケと言えばあまりいい印象が無かったようだ。 東條英機 関東軍参謀長 星野直樹 国務院総務長…

芥川龍之介―長篇小説 小島政二郎

嵐山光三郎は「文士の伝記はまず、死がその前提にある」と言っているがまさにその通り。 または「小説家の死は事件であるとも」。 これまで数多くの文士に関する伝記・評伝の類を読んできたが中でも一番多いのは太宰に関するもの。 太宰と関係した3人の女性…

虹の岬 辻井喬

確か初めて「若いツバメ」という言葉を使ったのは平塚らいてうと記憶するが。 明治41年、森田草平と例の塩原事件を起こした後、『青鞜』制作に入り、茅ヶ崎に移り住んで5歳年下の画家、奥村博史と同居したのを切っ掛けに友人たちに対して言ったのが「若いツ…

芸術家たちの秘めた恋 メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代 中野京子

思うに19世紀に現れた天才たちにとって音楽家ほど職業として激務なものもなかろう。 例えば小説家は日々、書斎でものを書き完成したら出版社に持っていけばいい。 画家はアトリエで作業し展覧会を開く、勿論、野外でのスケッチもあるが。 みなが家に籠ってい…

村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝 栗原康

世に言う甘粕事件を知るには数人の著名人の経歴も一応知っておかなければならない。 第一に大杉栄、そして甘粕正彦憲兵大尉、伊藤野枝、神近市子、辻潤、平塚らいてう 荒畑寒村、山川均、堺利彦などだろうか。 中でも大杉と甘粕に関する研究書は多い。 確か…

ルイズ―父に貰いし名は 松下竜一

一代の風雲児といわれた大杉栄と伊藤野枝が殺害されて90年余。 大杉38歳、野枝は28歳という短い生涯だった。 現在、二人の名がどれほど認知されているか知らないが、私が彼らの名に初めて出会ったのは、おそらく昭和47年頃ではないかと記憶する。 その後、一…

心淋しき巨人 東郷青児 田中穣

これを読むと、美術界に於ける東郷青児の評価は芳しくない。 しかし、著者は彼を擁護する為にこれを書いたのか。 「東郷という男は、本当は、美術界で言われるような悪党ではないのかもしれない」 が、東郷を取り巻く環境は名声こそ二科会の帝王として高い地…

鎌倉のおばさん 松村友視

永井荷風は、女に対する欲望が枯れ果てた時、死を願ったそうだが、まあ、それも解らぬ話ではない。 男にとっては女あっての人生だとも言えるわけで。 人間社会に於いて芸術家は極端な例を仕事や実生活に持ち込むことがある。 故に、その取り巻きは否が応でも…

かの子繚乱 瀬戸内寂聴

瀬戸内寂聴という人は伝記文学の名手だ。どの本を読んでもこちらをぐいぐい引き込む。この『かの子繚乱』も傑作の一つだろう。 昭和の30年代だと記憶するが文豪谷崎に会いたいがため、舟橋聖一に仲介を頼んだと何かで読んだが、その谷崎の学生時代、同級生に…

殉愛 原節子と小津安二郎 西村雄一郎

本来なら『純愛』と書くのが通常だが敢えて『殉愛』と表記するところに意味深なもを感じる。 並々ならぬプラトニックな愛が存在するかのようなタイトルだが、果たして本当のところはどうなんだろうか。 殉愛とは愛に殉ずるということからして、余程深い思い…

檀 沢木耕太郎

昭和51年『火宅の人』がベストセラーになっていた頃の事をよく記憶している。 しかし、この小説が出るまで檀一雄という作家のことは知らなかったと思う。 私はまだ若く、明治生まれの作家が次々に世を去る瞬間を無為に過ごしていた。 『火宅の人』は完成まで…

ゲーテさん こんばんは 池内紀

文豪ゲーテなんて知らないもんね~! ショーペンハウアー、カント、パスカル、シラー、ハイネ、な~んにも解りません。 だから、私も訪ねてみたくなった。 「ゲーテさん こんばんは」 そして、話しを訊いてみた。 だが、やっぱり解らなかった。 ただ、天才は…

滝田樗陰 - 『中央公論』名編集者の生涯 杉森久英

長い間の懸案がやっと解決したような気分だ。 あくまでも仮定の話しだが、もし私に文才あらば日本文壇史なるものを書きたいと永年、夢想して来たが、さて、肝心の主役は誰に据えるのか、一向に定まらぬまま月日だけを空費させて今日に至った。 暗中模索の数…

不屈の横綱 小説 千代の富士 大下英治

あれは、いつの事だったか? 30歳を少し出た頃だと記憶するが、その日、名古屋栄町のとあるホテルのラウンジでコーヒーをひとり飲んでいた。入店した時には気付かなかったが隣の席に大鵬親方が座っているのを見て驚いた。お連れさんが二人、おそらく奥さんと…

危機の外相 東郷茂徳 阿部牧郎

書棚を見ている。 外務大臣経験者の本を過去、何冊読んだか? 陸奥宗光 大隈重信 加藤高明 小村寿太郎 幣原喜重郎 犬養毅 斎藤実 広田弘毅 野村吉三郎 松岡洋右 東郷茂徳 重光葵。 他に首相が一時、兼任している場合もあるので。 伊藤博文 西園寺公望 山本権…