美術関連・写真(読書録)
芸術作品を紐解くに、先ずはベースに歴史ありということをつくづく思う。 何も知らず私小説を読んでいて、後になって、あの小説のモデルは誰々だったんだと知る事は多々あるが、その時点では既に内容を忘れているからして残念に思うことしきり。 本書には参…
これを読むと近代の画家たちは、上京生活に於いて塗炭の苦しみを味わっていたことが良く解る。 今に名の残る著名な人は、常に衣食住に苦しみ、世間の洋画に対して理解も乏しく悲惨な末路を辿った人が多い。 故に情報量も多く、これはなかなか骨の折れる本だ…
扨て、いよいよ最終巻だが、本当に長くかかってしまった。 この巻では「黒い絵」と言われるデッサンについて紙数を割いているが、ゴヤのデッサンは、その画帳に自らつけた番号によると313枚あった筈で、現在その存在が確認されている物は271枚、だが現物を見…
遣って来ました第三巻です。 先ずもって、私を驚かせたのは61ページにあるこの記述、ある結婚式に出席したしていた家族の中に、17歳のレオカーディア・ソリーリャ・ガラルサという極めて美しい少女がいた。 レオカーディアは直ぐイシードロ・ウェイスという…
扨て、第二巻だが、先ずメモリたいことから書いていく。 今日ではすでに完全に忘れさられてしまったことであるが、宗教画を描く画家は、細心な注意を払って宗教図像学上のもろもろの約束を守らなければならなかったのである。慎重な上にも慎重でなければなら…
以前から、どうも苦手意識のある作家に辻邦生と、この堀田善衞を自意識的に挙げていたが、ブックオフで『ゴヤ 全4巻』があるのを見て衝動買いをしたままお蔵入りさせていた。 然し、いつまでも棚の肥やしにしているわけにもいかず、どっこらしょと重い腰を上…
タイトルの『日本のゴーギャン』というのはミステイクではなかろうか。どこに日本のゴーギャンたり得るものがあるのか。ゴーギャンのタヒチに引っかけて、単に田中一村が奄美大島へ移住したというだけのこと、一村がそれに倣ったわけでもなんでもない。 また…
「いかなる物であれ美術市場で不足をきたす物があれば、そしてそれに応じて高値を呼ぶものがあれば、そこに必ず偽造行為が登場する」 フランク・ジェウェット・マザーという批評家が言っているらしい。 価値のある物の偽造とは、需要と供給の法則の副産物に…
あり得もしない妄想を思い描いたとして、私の場合、アラブの王様のようなとてつもない大金持ちと仮定した場合の話だが、あり余る財力で美術品や骨董品を買い漁り、個人美術館を作る、そんなことを考えてみたりする。 入場者は全て会員制で、私はいつもオーク…
本題を前に昨日の『セクシー川柳』に関連して私も、女性の立場にたって一句考えてみた。 おなごには ふにゃ珍へのこ 用はなし お後がよろしいようで。 数年前から行きつけにしている歯医者に、とても気になる女性スタッフが居る。 歳の頃は、まあ22・3歳とい…
◆T15. 笛吹童子 (ステレオ) ひばり児童合唱団 懐かしいですね、60歳前後の方ならまず知らない人が居ないぐらい有名な歌で、映画化もされ、東映のスターが出演していました。 東千代之介 中村錦之助 月形龍之介 大友柳太朗 元々は確かラジオ番組だったらし…
伝記本や歴史ノンフィクションなどを読んでいると、故人の交流関係の中に、突然興味を引く人物が現れることがある。 作家、画家、音楽家など、とにかく生き様に興味を持つと、その人物を尋ねたくなるのもこれまた人情。 今回の訪問者は村山槐多、最近まで全…
時空を飛び越えて、維新を生きた人と名刺交換でもしているような錯覚を覚える本だ。 幕末の侍や明治初年の裕福な日本人、または外人の写真が300枚余も掲載されている。 以前、鎌倉の鶴岡八幡宮や大仏の前で映る侍の写真を見たことがある。 勿論、二本差しだ…
そうなんだ! 「すべての芸術はエクスタシーに通じる」 陶酔、恍惚、艶、やはり芸術にはエロチシズムの妙なる調べが流れている。 何につけ絶頂感とは達成感と同義語だから作品も、その極みに達したとき芸術も一層輝く。 しかしながら芸術の世界では、そのエ…
佐伯祐三絵画の真贋論争? 聞いたことないな。 いや、ただ私が知らないだけの話しだが。 ならばということで早速古本屋へ。 見つけたはいいが、何やら小難しそうな本。 本題に入る前に疑問点が二つ! 大正9年9月1日、祐三の父祐哲が58歳で死去。 死の直前、…
これは現在のルーブル・グランド・ギャラリー。 しかし1940年、迫るドイツ軍のため引っ越しを余儀なくされた。 その結果がこの状態。 しかし、日本のように絨毯爆撃されていたら ユベール・ロベールが描いたようなことになっていたかも知れない。 フェルメー…
まさかゴッホの手紙を読むことになるとは考えてもみなかったが、しかし以前、一度だけ、この大作に挑戦してみようかと思ったことがある。 2001年、みすず書房から出たこれだ! ゴッホ没後100年を記念して1990年にオランダで刊行、翻訳出版されたものだがこれ…
弟テオに送った膨大な手紙は、往復書簡の形を取っていないため、一方的にゴッホのものだけを読んでいるので、どうも話が解りにくい。 ましてや殆んどの登場人物を知らないので尚更だ。 熱意や美術論で押しまくり、南仏アルルを拠点に印象派の工房を作るのが…
「芸術のうちに、神に値いする人間の偉大な資質が含まれないとしたら、それは凡庸陳腐な言葉と化すだろう。人類の最も気高い知彗から生まれた力強い心理や理由さえも、大衆にはなんの理解も印象さえも与えず、芸術家はそれをはっきり示そうと絶えず神の救い…
フリーダ・カーロとはラテン・アメリカで最初にルーブルの殿堂入りを果たした画家らしい。 彼女のあまりに壮絶な人生は数ある美術絵画史の悲喜劇を超越して余りある。 本書は20年以上前に書かれたものだが通読した感想は一言で「痛い」に尽きる。 デートの最…
明治以降、西郷隆盛を除けば歴史に名を留めた人物の写真は殆ど現存すると思うが、しかし、その歴史上の人物本人が撮った写真というと意外と公表されていない。 私の知る限り有名なところでは徳川慶喜と萩原朔太郎ぐらいだろうか。 慶喜の場合はもっぱら風景…
昭和の初め、葛飾北斎の「隅田川両岸一覧」に触発され、憑かれたように絵巻の制作にのめり込んだ版画家の作品で総延長60メートルに及ぶ桁外れの大作。 隅田川沿いの街を一本の細筆を使って墨だけで描き、昭和10年9月2日、その男は忽然と姿を消す。 男の名は…
スペイン風邪で島村抱月が死んだのは1918年(大正7年)11月7日。 大山捨松も大正8年2月18日に同じ病で斃れ、全世界では約5000万人が犠牲になり日本でも48万人が命を奪われたとか。 第一次大戦の最中で、その一人にエゴン・シーレも含まれていたわけだが、6…
戦前から高度成長期あたりの、まだ貧しかった懐かしい日本の姿を捉えた写真集で木村伊兵衛さんや土門拳さんらが写した生きる逞しさをカット切りしたような作品。 上の写真は当時の子供たちに人気のあったチャンバラごっこ、この時代、正義の味方は鞍馬天狗で…
本書を読んで、あるひとつのことを学んだ! それは、もう二度とみすず書房には手を出さないこと。 これで三度目となったみすず書房。 『イェルサレムのアイヒマン 悪の陳腐さについての報告』ハンナ・アーレント 『メリー・スチュアート』 ツヴァイク 『D.G.…
佐伯祐三が画家の道に進もうと思った動機は武者小路実篤の『その妹』を読んで感動したからとある。 戦地で失明し、画家になれなかった主人公に代わり自分が絵の道に進みたいと思い、武者小路にファンレター送ったと。 その手紙を武者小路家に出入りしていた…
アンリ・ルソーとはこんな絵を描く人だが実に変わっている。 代々フランスのブリキ職人で父は不動産業にも手を出していたらしいが、全く美術史の中に系譜を持たない彼は一族の中でも変わり者の絵描きと思われ、原因として従妹同士で結婚した親族がいたことか…
絵画史上、印象派の一世代前に隆盛を極めたバルビゾン派の拠点、バルビゾン村はパリから南へ約60㌔の地点にあるらしい。 発端は、この地方に一軒しかなかった食糧品屋が1824年に「ガンヌの宿」なるものを開業し、ここを根城に多くの画家が参集したことに始ま…
後世の人から見ると天才クラシックの作曲家や画家は独創力に優れ鑑賞する者を圧倒するが、どういう訳か巨匠同士の間では互いに認め合わないことがままある。 例えば藤田嗣治は黒田清輝と画法が合わず竹内栖鳳にも受け入れられず佐伯祐三とも没交渉を保ち独り…
支倉常長が伊達政宗の命で慶長使節として教皇パウロ5世に謁見したのは1615年。 本書によると、カラヴァッジョの絵に嫌悪感を覚え焼き捨てるように支持したのがパウロ5世ということらしい。 カラヴァッジョが描く聖人像を忌み嫌う教皇と彼の天才性を疑わない…