歴史ノンフィクション

マタハリ  マッシモ・グリッランディ

私が最も忌み嫌う事件事故の中のひとつに文化財の焼失、又は破壊という行為がある。 勿論、故意によるものばかりではないので、残念と悔しがる以外にないが,、例えばこんな記事。 2013年10月19日夜、オランダ北部の町レーワルデンで、第1次世界大戦中の女ス…

東京震災記 田山花袋

古本屋でよく見かける光景で、細い通路の奥に番台みたいなものがあり、そこに店主が座り、比較的高価な本は、その店主の後ろの棚に並べてあることがある。 勿論、店主に頼まないと見せて貰えず、そもそも取れない所に置いてある。 必ず買うとは限らない本を…

GHQと戦った女 沢田美喜 青木冨貴子

著者の本を読むのはこれで二度目になる。 『731―石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く』を数年前に読んだが、とにかく徹底した調査力で、個人でここまで出来るのかと感心するほど凄い。 今回はどうなのか、因みに著者の住まいはブルックリンだとか。 本作を書き上…

昭和史発掘 石田検事の怪死 松本清張

う~ん、疲れそうな記事になりそうだ(汗 まず、この事件を語る上で当時の政治状況から話すのが得策かと思うので、そこから始めたい。 舞台は大正15年10月30日の東京。 この年は12月25日から昭和と改元。 政局は与党憲政会が若槻内閣の下、不安定ながらも舵…

マラーを殺した女 安達正勝

副題として『暗殺の天使シャルロット・コルデ』というタイトルがある。 端的に言えばこの絵が全てを象徴している。 ジャック=ルイ・ダヴィッド作『マラーの死』 殺害されているのはマラでもマーラーでもない。 フランス革命の指導者ジャン=ポール・マラー…

知られざる「吉田松陰伝」-『宝島』のスティ-ヴンスンがなぜ? よしだみどり

安政元年(1854)3月28日午前2時、吉田松陰とその従者、金子重輔はペリー艦隊の旗艦に小舟で接近、密航を企てたが甲板からは船員の、 「船から離れろ」 という支持。 二人は諦めず、舷側の梯子にしがみ付くが、船員らは上から長い棒で舟を突付き荷物と太刀を…

西郷隆盛の首を発見した男 大野敏明

政府軍が西郷ら数百人の立て篭もる城山に最後の総攻撃を仕掛けたのは明治10年9月24日午前4時。 既に西郷軍には、この日の総攻撃は通告されており日本史にも類例のみない悲痛な戦いの終焉が近づいていた。 そして戦闘開始、雨あられと銃弾が打ち込まれる中、…

天皇陛下の私生活: 1945年の昭和天皇 米窪明美

長い天皇家の歴史の中でも壬申の乱を除けばどうだろうか、信長時代の正親町天皇、足利尊氏と戦った後醍醐天皇、幕末の動乱に苦悩した孝明天皇、日清、日露を乗り切った明治天皇、そして天皇制すら危ぶまれ激動の時代を生きた昭和天皇。 しかし、国土が焦土と…

カチンの森 ポーランド指導階級の抹殺 ヴィクトル・ザスラフスキー

さてと、この難儀な本を何から書き始めたらいいのか実に悩ましい。 多少なり記憶も総動員して書くので不備な点があればご容赦願いたい。 まず大戦勃発の1939年といえば昭和14年になるが第一次近衛内閣退陣後、登場したのが枢密院議長などの経験者平沼騏一郎…

プリンス近衛殺人事件 V.A. アルハンゲリスキー

ソ連時代のノーベル文学賞作家ソルジェニーツィンの『収容所群島』を地でいくような本だ。 ポツダム宣言第九条には次のような項目がある。 「日本国軍隊は完全に武装を解除せられたる後、各自の家庭に復帰し平和的且生産的な生活を営む機会を得しめらるべし…

ルートヴィヒ2世 須永朝彦

『うたかたの戀』という映画を知っているだろうか。 1936年作品で主演は名優シャルル・ボワイエ。 1889年に起きたオーストリア=ハンガリー帝国の皇太子ルドルフと男爵令嬢マリー・フォン・ヴェッツェラ心中事件をモデルにした作品で、謎の多いこの事件につ…

甘粕正彦 乱心の曠野 佐野眞一

ペリー来航後、世間を騒がせ、または驚愕させた事件がどれほど起きたか知らないが、大正12年の甘粕事件ほど近代史上の謎を残した大事件も珍しい。 大逆事件で左翼勢力が一掃され、生き残った最後の大物、大杉栄と妻伊藤野枝、甥の橘宗一少年(6歳)が東京憲…

近衛文麿「黙」して死す 鳥居民

まったく論評に困る本を読んだものだ。 著者の本は初読みだが、かなり憶測でものを言っている。 勿論、私にその説を論破できるほどの学識などありはしないのだが、どの部分を取っても納得できる手応えがなかった。 天皇を護るためには木戸内府か近衛公のどち…

対馬丸 大城立裕

学童疎開船は非軍事の観点から戦闘行為には参加せず『戦時国際法』からいっても攻撃対象にはならないはずだった。 にも関わらず昭和19年8月22日22時23分、悪石島近海で敵潜水艦から3発の魚雷攻撃を受け海の藻屑となったが、この事件は国際法違反に問われる…

クラシックホテルが語る昭和史 山口由美

戦争で都市を爆撃する場合、代表する高級はテルは好き好んで爆撃しないという説があるそうだが本当だろうか。 そもそも空襲がなかった奈良ホテルや箱根の富士屋ホテル、軽井沢の万平ホテルはともかく横浜のニューグランドホテルが戦災に遭わなかったのは不思…

731 石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く 青木冨貴子

731部隊の人体実験に関する詳細は以前何かの本で読んだが、本書は人体実験を主題にしているのではなく著者が探し出した石井中将自筆ノートの解明を主題にしている。 千葉県の大地主だった石井家の繁栄と戦後の凋落、GHQとの取引で石井を含め731部隊関係者全…

東條英機 処刑の日―アメリカが天皇明仁に刻んだ「死の暗号」 猪瀬直樹

そうか、言われてみれば現在の天皇誕生日と東條大将以下七名の処刑日は同じ日なわけか。 他にGHQは新憲法施行日を昭和22年5月3日にしているが、それは一年前の東京裁判開廷日と同日。 A級戦犯28人を起訴した4月29日は天皇誕生日。 つまりアメリカ側の狙いは…

リリー・マルレーンを聴いたことがありますか 鈴木明

昭和45年といえば三島の自決と大阪万博の年だったがサミー・ディビス・ジュニア、セルジオ・メンデス、フィフス・ディメイション、マレーネ・ディートリッヒのライブ・ステーが万博ホールで行われていたなんて今回初めて知った。 はて、私が行ったのはいつだ…

英国王冠をかけた恋 渡邊みどり

1937年といえば風雲急を告げるヨーロッパで、翌年3月にはドイツがチェコを併合。 そんな中、ヒトラーを表敬訪問したのが先のイギリス国王ウィンザー公夫妻だが、公の真意はどこにあったのかよく解らぬ。 ひどくご満悦のヒトラーを現在も映像で見ることができ…

松井石根と南京事件の真実 早坂隆

う~ん、実に重いテーマの感想文を書くということは一介のブロガーとしては気が重く疲れる。 「歴史は繰り返さない。ただ、韻を踏むだけである」 という言葉があるそうだが私には解ったような解らないような。 まず単純に思うことはアメリカが行った大都市に…

ヴァレンヌ逃亡 マリー・アントワネット 運命の24時間 中野京子

フランス革命勃発というのは1789年7月14日、バスティーユ監獄の襲撃を持って起こり、その後、ルイ16世とマリー・アントワネットは断頭台の露と直ぐに消えたわけではないんですね。 幕末維新には詳しい私ですがフランス革命からナポレオンの登場という混乱期…

明治のサーカス芸人はなぜロシアに消えたのか 大島幹雄

昔の日本ではサーカス芸人と言わず軽業師といったのだろうか。 既に幕末から明治初年頃には海外興行に出ていたらしい。 日本人の器用性がこの職業に向いていたのか特に露西亜では「ハラキリショー」などが熱狂的な歓迎を受けたとある。 しかしその後に起きた…

本郷菊富士ホテル 近藤富枝

本論に入る前に菊富士ホテルの経営者、羽根田幸之助は妻きくえとの間に20年間で12人の子を産み、その内3人は流産、成長した子供は三男六女。 長男で第四子生まれの冨士雄の結婚相手、延子が著者の実父の妹ということになる。 羽根田幸之助が岐阜に生まれたの…

犬たちの明治維新 ポチの誕生 仁科邦男

元より予想はしていたが膨大な参考文献の資料の引用などもあってかなり難しい本だ。 民俗学ならぬ犬俗学とでも言うような幕末以降、太平洋戦争に至るまでの犬たちが辿った悲劇を扱った本で知らないことずくめで勉強になった。 そもそも犬は江戸時代、ペット…

闇の女たち: 消えゆく日本人街娼の記録 松沢呉一

570頁もある大著で、はっきり言って何から書いていいのか分からない。 内容は2部構成で、第1部は「街娼インタビュー」第2部は「日本街娼史」からなるのだが著者が書きたかったのは純粋な日本人街娼が近年減りつつあるため、街娼の戦後史を残したかったとある…

チェ・ゲバラの遥かな旅 戸井十月

その昔、ジョン・フォード監督作品で『リオ・グランデの砦』という映画があったが往年の西部劇ファンならご存じかと思うが何しろ1950年作品と古い。 リオ・グランデとはスペイン語で大きな川を意味するが1967年10月8日、ゲバラはリオ・グランデのユーロ渓谷…

戒厳令下チリ潜入記―ある映画監督の冒険 G・ガルシア・マルケス

1973年9月11日のこの日、チリで起こった大事件のニュースを新聞で知った私は、その記事を切り抜いて長い間、保管していた。 それは合法的に政権の座に就いた社会主義のアジェンデ大統領がピノチェト将軍率いる軍部クーデターで崩壊し、全世界に衝撃を与えた…

波に夕陽の影もなく―海軍少佐竹内十次郎の生涯 佐木隆三

昭和23年に新聞連載された大佛次郎の作品に『帰郷』という小説がある。 今日では絶版本で古本屋でしかお目にかかれないが、その主役となった守屋恭吾なる人物が、今回の本のモデルで竹内十次郎海軍少佐という人物。 まったく予備知識がないままの読書で、予…

李香蘭の恋人 キネマと戦争 田村志津枝

私はテレビ・ショッピングや通販などで物を買うことはまずない。 どうしても現物を見ないと買えないタイプなのだが例外もある。 絶版本など、いくら古書店巡りをしても見つからない書籍はAmazonで購入しているが、これが時に失敗を招く。 例えばこの本『李香…

大川周明と狂気の残影 アメリカ人従軍精神科医とアジア主義者の軌跡と邂逅 ダニエル・ヤッフェ

30数年前のこと、近江の国、義仲寺にある芭蕉の墓を詣でたことがある。 芭蕉の弟子が詠んだという、「木曽殿と背中合わせの寒さかな」の由来通り、木曽義仲と芭蕉は向かい合うように眠っていた。 だからというわけではないが、今回の主役、大川周明は東京・…