居眠り狂志郎の遅読の薦め

喰う寝る読むだけの素浪人です

昭和文学

肉体の学校 三島由紀夫

自殺直前の有島、芥川、太宰の評伝には必ず女が出てくるが、何故か三島には、それらしき女性は出てこない。 専ら、右翼、楯の会、自決である。 三島と言う人はいったい、どの程度、女性経験があったのだろうか。 この小説は恋の駆け引きをメインに書かれてい…

鍵 谷崎潤一郎

『鍵』とは何の鍵なのか全く予備知識のないまま買ってしまった。 果たして、それが却って良い結果の読後感だったかも知れない。 端的に言えば夫婦の性愛を謳っているのだが、谷崎が取った手法が実に面白い。 夫はカナで妻は平仮名を用い日記を書く。 互いが…

カレーライスの唄 阿川弘之

ポツダム大尉という言葉があるが、ポツダム宣言受諾後に階級を一つ進級させることで、阿川弘之は支那方面艦隊司令部附として終戦を迎え、この、ポツダム大尉として焼野原となった郷里広島に帰った。 その後、志賀直哉に師事して作家になるのだが、本題を前に…

最高殊勲夫人 源氏鶏太

私の最近の読書傾向と言えば専らノンフィクションか伝記評伝の類。 推理小説やエンターテインメント系の本はあまり読まなくなってしまった。 ある面、堅苦しいったらありゃしない。 そこで閑話休題のように時折、手にするのがちくま文庫なのである。 まるで…

ぽんこつ 阿川弘之

例に拠って筑摩文庫、ユーモア小説の復刊、阿川弘之作品の第二弾である。 思うに、昭和30年前後のこれら大衆小説は殆どが絶版の憂き目にあっていることは間違いない。 例えば今日、石坂洋次郎などを読む人がいるだろうか。 おそらく本人たちも将来、自分らの…

芥川追想

追悼文だけで編纂した岩波文庫というのが嘗てあっただろうか! この手法なら明治以来、多くの文豪の死を、それぞれ一冊の本に纏め、いくらでも上梓できる。 芥川に限らず、是非、取り組んでほしいテーマのように思うが。 しかし、何故今回、芥川だったのか。…

妻への祈り - 島尾敏雄作品集

最近、梯久美子(かけはし くみこ)というノンフィクション作家に興味を持っている。 戦後生まれの55歳だが、女性には珍しく栗林中将を題材に本を書いたことが私の触手を動かした。 その梯久美子氏が『狂うひと ─「死の棘」の妻・島尾ミホ』という本を刊行、…

蜜蜂・余生 中勘助

年間を通して、中勘助の『銀の匙』だけで国語の授業を行うという、一風変わった中学教諭の話しを聞いたことがある。 教科書を使わず『銀の匙』一冊あれば、こと足りると先生はテレビで言っていたが、そんなことが可能なんだろうか、私には解らない。 今や中…

死の棘 島尾敏雄

それもこれも、梯久美子が去年出版した大著『狂うひと ─「死の棘」の妻・島尾ミホ』を読むというミッションに駆られたことに他ならない。 『妻への祈り - 島尾敏雄作品集』『海辺の生と死』と読んで、 今回が第三段『死の棘』ということになる。 しかしまだ…

末の末っ子

昭和ファミリー小説の決定版とあるが確かに面白い。 まず、タイトルがいい! 『末の末っ子』、つまり予定外の妊娠出産だったというわけだ。 阿川弘之氏には三男一女の子があり、その三男誕生が51歳の時とある。 まるで孫のような年齢差の子供が産まれ、周囲…

上海 横光利一

織田 作之助 昭和22年1月10日 横光 利一 昭和22年12月30日 菊池 寛 昭和23年3月6日 太宰 治 昭和23年6月13日 この時期、文壇はたった1年半年足らずの間に4人もの流行作家を亡くしている。 しかし今日、織田作、菊池 寛、太宰 治の再燃はあっても横光利一ブー…

わが町・青春の逆説 織田作之助

大雑把に言うなれば新潮文庫と岩波文庫の違いはこうなるか! 新潮は自然淘汰文庫、岩波は復刊復刻文庫。 平たく言えば新潮は読まれなくなった本は容赦なく切り捨てられ岩波は切り捨てられた近代文学の復興に努めている。 そういう意味では確かに岩波の価値は…