愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

昭和戦史(読書録)

聞き書き ある憲兵の記録 朝日新聞山形支局

甲種合格をした山形の優秀な農村青年土屋は、一兵卒として満州に送られる。國を出る時は「出世して帰って来いよ」との声に背を押され、何が何でもその声援に応えたいという気持ちを胸に、同僚にライバル心を燃やし職務に励むが、遅い出世に焦り憲兵隊を志願…

東京裁判を問う 

本書は戦後38年経った1983年の5月28日と29日の両日、池袋のサンシャインシティ、元巣鴨拘置所跡で行われた「東京裁判」国際シンポジウムの記録を編んだもので、未だ裁判に関係した人が存命である中で行われたものだ。戦勝国が敗戦国を問うことの是非、侵略戦…

復刻・火野葦平「バタアン半島総攻撃従軍記」

『バタアン半島総攻撃従軍記』つまりバターン死の行進で有名なフィリピンのバターン半島の事です。 この戦いで日本軍はコレヒドール要塞を占領してフィリピン全域を完全に制圧。 アメリカ=フィリピン軍が降伏したが、然し、予想を遥かに超える捕虜を抱えた…

戦犯 ある軍医の悲劇 冤罪で刑場に散った桑島恕一の真実 工藤美知尋

戦後、行われたB・C級戦犯は短期裁判で、かなりの冤罪があったと思われる。 記録によると横浜やマニラなど世界49か所の軍事法廷で裁かれ、被告総数は5700人にのぼり、このうち984人が死刑に処せられた。 ここに登場する桑島恕一軍医大尉は、大正5年5月30日生…

藤田大佐の最後 松原一枝

通化事件とは、1946年2月3日に中国共産党に占領されたかつての満州国通化省通化市で中華民国政府(国府軍)の要請に呼応した日本人の蜂起と、その鎮圧後に行われた中国共産党軍(八路軍)および朝鮮人民義勇軍南満支隊(李紅光支隊、新八路軍)による日本人…

藤田大佐の最後 松原一枝

通化事件とは、1946年2月3日に中国共産党に占領された、かつての満州国通化省通化市で中華民国政府(国府軍)の要請に呼応した日本人の蜂起と、その鎮圧後に行われた中国共産党軍(八路軍)および朝鮮人民義勇軍南満支隊(李紅光支隊、新八路軍)による日本…

世紀の愚行 太平洋戦争・日米開戦前夜 日本外交失敗の本質 リットン報告書からハル・ノートへ 太田尚樹

取り立てて目新しいものはなかったが、ただ、リットンは帰国前にこのようなことを言っている。 「国際連盟を脱退するとは思わなかった。結果として満州国の実行支配は認めているのに、馬鹿正直な外交官や軍人はそれを読み取れなかった」と。 土壇場の日米了…

野田日記 野田 毅

書店へ行って、日記、手紙などの背表紙を見ると必ず手に取る私だが、このシンプルな表紙を見て何のことやら分からず、野田毅とは誰なのか帯を読んでみるに百人斬りと書いてある。 つまりあれか、支那事変の時の将校の日記か。 そんなものが世にあるとは知ら…

将軍はなぜ殺されたか―豪州戦犯裁判・西村琢磨中将の悲劇 イアン ウォード

本書は、この手の物には珍しくオーストラリア人が書いている。 戦時中、マレー半島で起きた捕虜殺害事件の戦犯裁判が冤罪だったことを恥じ、それを細密に掘り起こし上梓しているが、これまでB・C級裁判で処刑された将官の本は、 『洪思翊中将の処刑』 山本七…

総員玉砕せよ!  水木しげる

何でも三島由紀夫は大の漫画好きで『劇画における若者論』の中でこんなことを書いている。 「私は自分の小学生の娘や息子と、少年週刊誌を奪ひ合って読むやうになった」 私とて当然、子供時代はあったわけで、テレビアニメの第一世代たる年齢でもあり、それ…

沖縄県民斯ク戦ヘリ 太田洋三

沖縄の地に初めて足を踏み入れたのは2001年の梅雨時だった。どうしても見ておきたい場所があるので是が非でもという思いで出かけ、飛行場からホテルに直行、チェックイン後に即タクシーに乗り込み。 「どちらまで」「海軍司令部壕へ」 沖縄の海軍司令官だっ…

東條英機の妻・勝子の生涯 佐藤早苗

映画『日本のいちばん長い日』は、取り分け私の好きな映画で、これまで何度も鑑賞しているが阿南陸相演じる三船敏郎は言うに及ばず、クーデターに参加した畑中少佐を演じた黒沢年男の演技も光っていた。 中でも見せ場は森近衛師団長殺害の場面だが蹶起失敗に…

インディアナポリス

映画『ジョーズ』を見た人も多いと思うが、あの中で漁師を演じるロバート・ショーが船内で他の二人に自分の経歴を話す場面がある。 大戦中、乗っていた船が日本軍の魚雷で沈められ、救助に来るまでの5日間、海面に浮きながら仲間がサメに襲われる話をする。 …

不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか 鴻上尚史

所謂、神風というのは海軍の第一回特攻隊『神風特別攻撃隊』から始まるのだが正式には「かみかぜ」ではなく「しんぷう」と読む。 対する陸軍の第一回特攻隊は万朶隊(ばんたたい)で海軍のゼロ戦と違い九九式双発軽爆撃機に800㌔の爆弾をくくりつけて体当た…

責任 ラバウルの将軍今村均 角田房子

押入れから古いノートを引っ張り出し、故角田房子氏の本を読んでいたのは、いつ頃だったか調べてみると以下のような順だった。 昭和61年 一死、大罪を謝す 63年 閔妃暗殺 甘粕大尉 平成元年 いっさい夢にござ候 責任 ラバウルの将軍今村均 約30年前後ほど前…

キスカ島 奇跡の撤退―木村昌福中将の生涯 将口泰浩

大戦中、良くも悪くも国内外に名を轟かした帝国陸海軍人は多い。 中でも私の嫌いな軍人と言えば辻 政信参謀と牟田口廉也中将。 牟田口中将はインパール作戦の失敗を受けて当然、割腹すべきであったと思うが戦後も生きながらえた。 辻参謀はどういうわけか戦…

「満州国」見聞記 リットン調査団同行記 ハインリッヒ・シュネー

本書はリットン報告書ではなく飽く迄も調査団のメンバーだったハインリッヒ・シュネーによる『満州国見聞記』で、正確に言えば満州、日本、中国、朝鮮、シベリア鉄道見聞記と言った方が適切かも知れない。 だが、肝心の『リットン報告書』を読んでないので調…

永田鉄山 昭和陸軍「運命の男」 早坂隆

その時代を体験しないものが読書によって歴史を理解しようとする。 それがいかに難しいことか体感させるような本だった。 今ではその名を知る人もあまり居なくなったかも知れぬが昭和の初期にはこのように言われた人だった。 「陸軍の至宝」「永田の前に永田…

永訣の朝 樺太に散った九人の逓信乙女 川嶋康男

そう言えばこの本を読んでいて長く忘れていた『氷雪の門』という映画のことを思い出した。 調べてみると1974年というからもう40年以上も前の映画になる。 即ち、昭和20年8月20日、実際に起きた事件の映画化というわけで、本書はその日、何が起きたのかを詳細…

湯河原襲撃 河野司

何につけ軍人に関するノンフィクションや伝記は時に気が重い。 この本も以前古本屋で買ったはいいが中々読む気にならず暫く放っておいた。 実に50年以上も前に発売されたもので初めて見た本だった。 私の所蔵本に、ニ・ニ六事件に関係した全青年将校らの手…

妻と飛んだ特攻兵 8・19満州、最後の特攻 豊田正義

人間、誰だって死にたくはない。 がしかし、時に命を懸けてでも守るべき事態が招来することもあり得る。 敢然とそれに立ち向かう勇気、この本は、そんな日本人を描いているように思う。 終戦後の8月19日、関東軍総司令部の命令でソ連軍に対し完全武装解除と…

真珠湾の不時着機 牛島秀彦

「九軍神」の話しを聞いたことがあるだろうか。 日米開戦の先陣を切って乗り込んだ5隻の特殊潜航艇。 真珠湾近郊で9人が戦死、それが「九軍神」として戦時中、高らかに祭り上げられたが潜航艇は2人乗り。 あとの一人はどうなったのか? その人物は捕虜第一号…

大日本帝国最後の四か月: 終戦内閣“懐刀”の証言 迫水久常

著者、迫水久常の名は今日、一般にはどれだけ知られているのか知らないが、終戦秘史をテーマにした本には欠くことのできない人物として広く認知されている。 鈴木内閣の内閣書記官長でいわゆる「玉音放送」を起草した人物の一人でもあり、時代の証言者として…

硫黄島 栗林中将の最期 梯久美子

国の為 重きつとめを 果たし得で 矢弾尽き果て 散るぞ悲しき 栗林中将、さぞかし無念の辞世の句であったであろう。 子供に送った絵手紙や妻への手紙を読んだが実にきめ細やかな愛情の持ち主で、戦局の厳しい中、今後の妻子の行く末を一途に心配しいる。 米軍…

チンチン電車と女学生 1945年8月6日・ヒロシマ 堀川恵子

毎年、8月になると必ずと言っていいほどNHKは戦争番組を特集する。 あの戦争を体験した多くの人を取材する中、良く聞くのが「生前、父は戦争の話しはあまりしたがらなかった」という証言だ。 しかし私の父は違った。 子供相手とは思えないほどの熱弁を振るっ…

私はその場に居た 戦艦「大和」副砲長が語る真実 海軍士官一〇二歳の生涯 深井俊之助

歴史を作る者、または変える者とは常に決断であると言っても過言ではない。 古くは日露開戦を控えて編成された連合艦隊司令長官は常備艦隊司令官であった、薩摩閥の日高壮之丞が、その任に当たるのが常道だったが、山本権兵衛海軍大臣は敢えて日高を更迭し舞…

看守が隠し撮っていた 巣鴨プリズン未公開フィルム

刑務所、拘置所、収容所などのイメージといえば、広大な敷地を高い塀で囲み、その上には鉄条網があり、監視塔で見張りの兵が銃を持って四六時中見張っている。 草はあっても樹木はなく、運動不足を解消するための小さな運動場、または散歩コースがある程度で…

時代の一面 大戦外交の手記 東郷茂徳

日本人にとって著名な外務大臣といえばいつの時代でも陸奥宗光と小村寿太郎ということになるのだろうか。 中学の歴史教育でも確か、この二人しか習った記憶がない。 いずれも戦勝国日本の外相ということで殊更にクローズアップされていると思うが、明治以来…

泡沫の35年―日米交渉秘史 来栖三郎

故事に「勝家の甕わり」という言葉があるが、日本人は昔から坐して死ぬより討って出るのを潔しとする習性があるのだろうか。 例えば浅井長政は籠城せずに果敢に討って出たし、石田三成は家康が上杉攻めで大坂を留守にした間を狙って挙兵した。 真田幸村は凡…

インパール作戦従軍記 一新聞記者の回想 丸山静雄

第二次大戦の三大決戦と言えば、エル・アラメインの戦い、スターリングラード攻防戦、硫黄島の戦いとなるが、どれもこれもうんざりだ。 ロンメルとモントゴメリーが北アフリカで雌雄を決したエル・アラメインの戦いは灼熱の砂漠で激闘、両軍を悩ませたのは蠅…