愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

日記・手紙・手記・随筆(読書録)

黒田日記

明治、大正期に活躍した日本洋画壇の巨匠・黒田清輝は、明治17年フランス留学中の2月9日から約40年間に亘って日記を書き溜めている。 その黒田画伯が亡くなったのは大正13年7月15日。 当時の新聞を見ると。 「黒田清輝子絶望/昨日からカンフル注射で辛うじて…

果てなき便り 津村節子

津村節子さんには、夫吉村昭氏の闘病生活を綴った『紅梅』という作品があるが、本書は二人の往復書簡などから、帰り来ぬ数々の思い出を追悼記のように纏めあげたもので、残された者の哀しみが読む者に伝わってくる。 二人は学習院の文藝部で知り合ったようで…

もうひとつの日露戦争 新発見・バルチック艦隊提督の手紙から コンスタンチン・サルキソフ

何年か前の新聞欄で司馬さんの『坂の上の雲』はトルストイの『戦争と平和』に匹敵するほど面白いと書かれていたが、それは本当だと思う。 その司馬さん、はたしてバルチック艦隊司令官だったロジェストウェンスキー中将の手紙が残っていたと知っていたかどう…

「黒縮緬」西条八十

『黒縮緬』は西条八十25歳ぐらいの随筆とあるから大正6年頃か。 一杯引っ掛けたあと、浅草六区に芝居を見に行った帰り、二人の女に声を掛けられた。 赤の他人だが、先ほどまで同じ芝居小屋に居た女で西条のことを「やなぎ、やなぎ」と言って呼び止め食事に誘…

いつまでもいつまでもお元気で 知覧特攻平和会館

毎年8月になると決まって終戦特集のような番組がNHKで組まれるが、特攻隊に関するものを見たのは、かれこれ30年以上前の話か。 その中で、ある隊員が両親に宛てた最後の手紙に痛く感動したことがある。 はっきりした内容は忘れたが、こんなことが書かれてい…

死刑確定直前獄中日記 永山則夫

永山則夫に関する本と言えば何を読んだか。 ・死刑囚 永山則夫 佐久隆三 ・裁かれた命 死刑囚から届いた手紙 堀川恵子 ・死刑の基準 「永山裁判」が遺したもの 堀川恵子 ・異水 永山則夫 永山事件に関してはいろんな面で感心を持った。 確かに、その生い立ち…

随筆集 明治の東京 鏑木清方

明治生まれの人は漢学の素養もあってか名文家が多い。 「半世紀ともなると難福交々(こもごも)、一見何の奇もなく無為に過ぎたようでも、越えて来た山河は険しい、祖母は神信心の篤い人だったので、一家が今日無事を楽しむのもその余徳であろう」 昭和27年2…

ゴーギャンの手紙 東 珠樹訳

1895年 何と言っても日記や手紙などは、本人が書いているだけあって第一級資料なのだが、書き送った全ての手紙を読むのはかなり骨が折れる。 現在ではメールやラインなどがあるので、あまり手紙を書くことがなくなったが、仮に書いたとしても、多くて便箋5枚…

心筋梗塞の前後 水上 勉

既に故人だが、水上勉さんが生前、心筋梗塞を患ったとは知らなかった。 古本屋の書棚でこの本を見つけ同病相憐れむの心境から購入、私も6年近く前、突然、胸の痛みを訴え心筋梗塞を発症した縁とでも言うか、水上さんのケースを知りたくなった。 よく知られる…

回想 日記 ノート 美知子 静子 富栄

晩年の太宰治の周辺には3人の女性が登場している。 正妻の津島美智子、『斜陽』のモデル大田静子、心中相手の山崎富栄。 私は太宰が書いた作品よりは、彼を取り巻く人たちが残した関連作品を読むのが好きで、友人知人の著作は資料として貴重な証言で頗る好奇…

栗林忠道 硫黄島からの手紙 栗林忠道

以前「なんでも鑑定団」に出演している鑑定士がこんなことを言っていた。 「物は欲しがっている人の所に集まる」 なるほど、確かに古本屋巡りをしていると探してもいないのに思はぬ書籍と巡り合うことがある。 まるで私を待っていたかのように。 何年前だっ…

ロッパの悲食記 古川緑波

古川緑波は昭和36年の1月16日に亡くなっている。 もう大変な美食家でこの本を読む限り、仕事の話しや家庭のことなどは殆ど出てこない。 とにかく食べて呑んで、呑んで食べての食道楽。 人気絶頂の頃で、あまり金銭的に困った様子もなく戦時中、食糧難の時代…

家族愛―東條英機とかつ子の育児日記・手紙より 東條由布子

監修は東條英機の孫で東條由布子となっているが、英機の長男、英隆氏の長女由布子さんは2013年2月13日に逝去された。 本書はタイトルが示すとおりの「育児日記」で、どちらか一方というわけではなく、夫婦で長男英隆誕生の喜びから育児の大変さを慈愛に満ち…

愛の手紙―文学者の様々な愛のかたち

歴史上の人物の日記というのは目的が二種類に分かれる。 後世、公になることを想定して書かれているものと、そうじゃないもの。 中には死後、破棄、焼却を遺言したにも関わらず、何らかの理由で遺族が遺したものもある。 しかし手紙やハガキ類はどうだろう。…

漱石山房の記 内田百閒

早稲田南町の漱石宅には以前から訪問客が絶えなかったので、鈴木三重吉の提案で面会日を毎週木曜日午後三時以降と定めるようになったが、いつしか若い文学者たちなどが集まり「木曜会」という文学サロンへと発展していく。 それを纏めて内田百閒が昭和29年に…

ふだん着の原敬 原 奎一郎

毎度の事だが感想文を書くのに劈頭、何から書き出していこうか、時に、湯舟に浸かりながら黙々と考えることがある。 中には書評の上手い人もいるが、拙い文章で悪戦苦闘、まあご勘弁あれ。 本書は、原敬の養子、原奎一郎氏が1971年に刊行したものを、中央公…

恋の手紙 愛の手紙 半藤一利

本書には著名な30人の恋文が掲載されている。 少し面倒だが名を連ねてみる。 左藤春夫、谷崎潤一郎、島村抱月、川田順、山本五十六、太宰治 斉藤茂吉 竹久夢二 芥川龍之介、島崎藤村、北村透谷、堀辰雄、樋口一葉、高見順 岡倉天心 夏目鏡子、森鴎外、横光利…

林芙美子 巴里の恋

書籍名はあくまで『林芙美子 巴里の恋』であって「巴里の恋」林芙美子ではない。 まあ大したことではないが、これまで幾人かの日記を読んできたが著名人の日記は凡そ二種類に分類される。 後世、公になることを前提として書いている。 例えば政治家の日記な…

随感録 濱口 雄幸

『随感録』の随感とは感じたままという意味。 『濱口雄幸遺稿集』として発売されたもので、 濱口雄幸(おさち)は昭和初期の総理大臣だが、昭和5年11月14日、昭和天皇行幸付添いのため東京駅現10番線ホームを歩いていたところを狙撃された悲運の人。 この本…

旅中日記 寺の瓦 志賀直哉 木下利玄 山内英夫

この平成の御世にこんな本を読んでいる人が居るのかという代物ですね。 本来、販売目的で書かれたわけではない志賀直哉(26)木下利玄(23)山内英夫(21)の道中日記で出發は明治四十一年三月廿六日。 因みに山内英夫とは里見弴のことです。 帰京後、参集し…

ゴッホの手紙 (下) テオドル宛

まさかゴッホの手紙を読むことになるとは考えてもみなかったが、しかし以前、一度だけ、この大作に挑戦してみようかと思ったことがある。 2001年、みすず書房から出たこれだ! ゴッホ没後100年を記念して1990年にオランダで刊行、翻訳出版されたものだがこれ…

ゴッホの手紙 (中) テオドル宛

弟テオに送った膨大な手紙は、往復書簡の形を取っていないため、一方的にゴッホのものだけを読んでいるので、どうも話が解りにくい。 ましてや殆んどの登場人物を知らないので尚更だ。 熱意や美術論で押しまくり、南仏アルルを拠点に印象派の工房を作るのが…

ゴッホの手紙(上) ベルナール宛

「芸術のうちに、神に値いする人間の偉大な資質が含まれないとしたら、それは凡庸陳腐な言葉と化すだろう。人類の最も気高い知彗から生まれた力強い心理や理由さえも、大衆にはなんの理解も印象さえも与えず、芸術家はそれをはっきり示そうと絶えず神の救い…

ヘンリー・ミラーのラブレター ホキ・徳田への愛と憎しみの記録 江森 陽弘 

最近、日本でもドン・ファンなる人が死んで20代の妻がいることを知ったが、芸能界でもこのような歳の差婚は珍しくない。 まあ、他人事で要らぬお世話なのだが、75歳になった時にいくら美人でスタイルがいい相手が現れたからといって28歳の女性と結婚できるか…

恋日記 内田百閒

今現在、いずれ読みたいと思っている本は430冊ほどあるのだが、先日のように古書市に出向くと必ず何冊かは見つかるもので、そんな時は必ず「あっ、あった!」と呟いてしまう。 その一冊が今回の内田百閒『恋日記』だったのだが、読んでみるとこれが意外に手…

追想 芥川龍之介 芥川文

菊池寛はこんなことを言っている。 「故人老いず、生者老いゆく恨みかな」 芥川や直木を偲んでの発言であることは間違いない。 時間は無情にも生者にのみ長れていく。 芥川文さんが未亡人になったのは28歳の時。 それからの40年、夫への思いを訊き語りして…

話術 徳川夢声

本題を前に少し気になったので同世代と思われる以下3人の生没年月日を調べてみるた。 獅子文六 1891年7月1日~1969年12月13日 76歳 徳川夢声 1894年8月13日~1971年8月1日 77歳 大佛次郎 1897年10月4日~1973年4月30日 75歳 なるほど、殆ど同時代を生き生ま…

日日雑記 武田百合子

武田百合子は夫泰淳の死から文筆活動を始めたので極めて寡作だが、作品の純度は高く日記文学者としての地位を確率している。 作家としての修行時代があったわけではないのに書き溜めていた日記が評判を呼び著述家として世に出た。 確かに評判通り天性の才が…

ちんちん電車 獅子文六

昭和30年代、子供のお小遣いは、おそらく1日10円と相場が決まっていたのではなかろうか。 その10円でお好み焼きが食べれた時代、まだ至る所、網の目のようにちんちん電車が走っていた。 キャラメル、ガム、チョコレート、アイスクリーム、そしてお菓子の量り…

双六で東海道 丸谷才一

以前、BSの『原宿ブックカフェ』という番組で紹介されていたので、なら読んでみようかと思い、早速手に取ってみたが丸谷才一の博覧強記だけが印象に残る本だった。 テレビ解説者が言っていた「遅刻論」の章だけを頼りに購入したようなものだから、その触りの…