居眠り狂志郎の遅読の薦め

喰う寝る読むだけの素浪人です

日記・手紙

妻への手紙―藤村 静子よりの手紙を添えて

写真で見る島崎藤村という人は温厚な紳士、理知的で、これぞ文豪という風貌であり、詩人としての才能も素晴らしく、一見、非の打ちどころがなさそうな人物に見えるが、生活力、品行、世間的な評価を考えると、やや問題がある、いや、あったのかも知れない。 …

クラクラ日記 坂口三千代

著者、坂口三千代は坂口安吾の妻で「クラクラ」とは安吾没後、三千代が開いたバーの名で命名者は獅子文六。 その三千代が10年にも亘って書き連ねた安吾の思い出の記が本作だが、臨終当日のことが詳細に書かれているので抜粋したい。 そして十七日の朝、茶の…

夢二日記〈1(明治40年~大正4年)〉

幕末以降、多くの人の日記が刊行されているが、大別すると二種類に分かれる。 死後、公開されることを想定して書かれている場合と、そうでない場合。 例えば啄木のローマ字日記の中には、他人に読まれてはまずいという記述がある。 女郎相手の話しなので、こ…

ハリス 日本滞在記 下

苦心惨憺読了、どうもこの本は学術的色合いが強い日記で一般向けではない。 しかし、そこはそれなり、ハリスが洞察する日本の国状や人となりは理解できたと思う。 さしずめハリスの観察はと言うと、一見、幸福そうに暮らしている庶民を見て! 私は時として、…

ハリス 日本滞在記 中

私が、初めて伊豆の下田に降り立ったのは確か昭和60年の夏だと記憶するが、一週間ばかり仕事で行ったのを皮切りにすっかり当地を気に入り、以来、何度となく足を運んでみた。 二度目の訪問は観光で、偶然にも黒船祭りの時期、米軍の軍楽隊演奏を中心に市内は…

ハリス 日本滞在記 上

実に重々しい本だ! 何しろ註釈が凡そ半分はあるかと思うほどで尚且つ文字が小さく旧漢字で書かれている。 古書店で見つけ先客が手に取ってペラペラ捲っていたのを目撃。 なかなかお目に掛かれない代物だけに相手が買わなければ即買いと思っていたが運よく我…

夢声戦争日記〈第7巻〉昭和20年

全くの偶然だが、以前、フォローしているTwitterの人のつぶやきを読んでいたら、古書市で『夢声自伝全三巻』を購入と書いてあった。 調べてみると昭和53年に講談社文庫から出ているらしいが、三巻で約1400頁ほどあるようで実に悩ましい。 私も何処かでこれを…

夢声戦争日記〈第6巻〉昭和20年 (後編)

ブロガーというのは決して仕事ではないが、こう毎日、記事を書いていると、疲れもするが、それはそれなりに楽しい。 しかしながら所詮は素人の域を出ないのであって文章の作成には苦労が絶えない。 そして今日も、まるで何かに憑りつかれたように書かねばな…

夢声戦争日記〈第6巻〉昭和20年 (前編)

さてと、全く苦心惨憺、何とか第6巻を読了。 今回は昭和20年1月から6月まで。 しかし、この本、実に読み辛い。 何しろ夢声先生、どういう訳か文章の送り仮名を平仮名とカタカナの両刀使い。 さらには死語となっているような漢字にルビも振ってないという始末…

夢声戦争日記 第5巻 昭和19年 (下)

夢声戦争日記、第5巻は19年7月から12月までの記述ですが、どうなんでしょうか、 10月頃まではのんびり生活しているようにも思えてしまうのですが。 当然の如く、同時代に書かれた日記などでは政治家は政局や国際情勢を、軍人は戦況を書くわけですが、我等が…

夢声戦争日記〈第4巻〉昭和19年 上

夢声日記、第四巻は昭和19年元旦から6月までなのだが、長編日記を読むと言うの些か難儀なものである。 ではと、この時期、戦火はまだまだ本土からは遠く、夢声は日々仕事に追われ、各地を慰問旅行しているばかりで、戦況の様子は分かりにくい。 既に食料難の…

夢声戦争日記〈第3巻〉昭和十八年

さて、第三巻である。 はっきり言って民間人の日記を読むというのは、あまり面白い作業とは言えない。 ひとつには知らない人が無数に出てくることにもある。 戦時中ということを考えれば軍人や政治家の日記の方が戦況や政争でこちらも一喜一憂するが、いくら…

夢声戦争日記〈第2巻〉昭和17年 下

さて、夢声戦争日記第2巻は昭和17年7月1日から始まる。 しかしである、徳川家では一向に戦争の気配が感じられない。 前編はまるで「夢声菜園日記」と見紛うような書き出しで、花が咲いた、アオガエルが来た、子供がトンボを捕まえたと何の変哲もない。 事態…

夢声戦争日記〈第1巻〉昭和16年・昭和17年 上

全七巻に及ぶこの日記は開戦当日から始まる。 著者は日清戦争が始まった明治27年生まれで、10年後の日露戦争、更に10年後の 第一次大戦、そして満州事変、日華事変、太平洋戦争と私たちの世代と違って戦争の表も裏もうんざりするほど見て来たと言っている。 …

太平洋航海記 キャプテン・クック

10年程前までは大規模な古本市へ行っても、さほど疲れを感じなかったものだが最近はどうも腰の具合が良くない所為もあってかじっくり陳列棚を見れなくなった。 それでも何故か、これという本はしっかり目に留まっているからおかしい。 『太平洋航海記』とあ…

夢二の恋文

詩人高村光太郎は千恵子ばかりを書き、萩原朔太郎は陋屋の中で隣り合う孤独に青ざめ、夢二は女に彩られた文章しか書かない。 そんな夢二が最も愛した女性はおそらく笠井彦乃だろう。 彦乃は細面の柳のような麗人で長髪、なで肩、理想のモデルでもあったよう…

辻潤の愛 小島キヨの生涯 倉橋健一

大正時代、新宿で中村屋というパン屋を営んでいたといえば相馬黒光夫妻のことだが、その相馬夫婦に支援を受けていた夭折の天才画家が中村彝(つね)である。 中村の代表作は盲目のロシア人を描いた『エロシェンコ像』だが、彼もまた相馬夫婦の支援を受けてい…

梨本宮伊都子妃の日記―皇族妃の見た明治・大正・昭和

久々に大阪天満にある天牛書店に足を運んでみた。 流石に大阪随一の古書店だけあっていつ行っても客は多い。 私が見るコーナーは毎度決まっていて文庫本全般、歴史、戦記、伝記、評伝、美術、映画、文壇史や日記といった類。 追い遣るように背表紙を見ていく…

アルフレッド・ドレフュス「獄中日記」

南米仏領ギニア・デヴィルズ島と聞いてピンときた! 映画『パピヨン』の舞台となった悪名高いあの島だ。 73年、スティーブ・マックイーン主演映画のラストシーンが蘇る。 ナポレオン3世の第二帝政期、政治犯を収容した悪魔島で、終身禁固刑のドレフュス大尉…

同日同刻―太平洋戦争開戦の一日と終戦の十五日 山田風太郎

あの日、あの時、何が起きたのか、各人各様の立場から記録に残った断片を繋ぎ止めて行く作業を地道に続けた結果が、この本ということだろうか。 少なくとも、この手の本を編むということは日本人としてどうしても知りたい事柄が私と一致しているとも言える。…

山下清の放浪日記

義務教育時代の九年間、どちらかと言えば落ちこぼれ的な存在だった私に幾ばくかの慰めと安らぎを与えたものは遠足と社会見学だった。 今一つに音楽鑑賞もある。 とにかく時間内に大人しく音楽を聴いているだけでいいのであるからして、これほど楽な授業もな…