平成文学

羊と鋼の森 森下奈都

誰だったか忘れたが以前、ある女性作家がテレビでこんなことを言っていた。 「今の時代、作家は直木賞か本屋大賞を受賞しないと食べていけないのよ」 更に、 「書くことだけで食べている作家は30人ぐらいではないか」という話を聞いたのですが、かなりリアル…

東京バンドワゴン 小路幸也

『東京バンドワゴン』、何のことかと思いきや、古書店の名前だった。 親子4世代が住む昭和のホームドラマのような小説で当主の堀田貫一は御年79歳。 明治から続く3代目の古本屋のおやじ。 それにしても明治の御代に『東京バンドワゴン』という店名はハイカラ…

青春デンデケデケデケ 芦原すなお

第105回直木賞受賞作、ロックに魅了された60年代の高校生らを描く青春小説で、時代の空気感はその当時を生きた者としてよく分かるが、やはりこの手の小説を読むには少し年を取り過ぎたか感動がなかった。 解説にはこんなことが書かれている。 あの1960年代は…

北緯14度 絲山秋子

未読だが芥川賞作家の絲山秋子に『北緯14度』なる作品がある。 なんでも子供の頃から大ファンだった打楽器奏者のドゥドゥ・ンジェア・ローズの故郷が見たいということで旅立ち、首都ダカールのホテルに滞在しているうちに友達が増え、ある日「俺の第三夫人に…

木暮荘物語  三浦しをん

『舟を編む』という辞書編纂に情熱を傾ける青年の映画を観たが、三浦しをんという作家はまた馬鹿に堅苦しい本を書く人かと思っていたら豈図らんや。 この作品は7編からなる短編連作小説だがいずれも通底するのはズバリ、セックス! 木暮荘という古い木造ア…

仏果を得ず 三浦しおん

「『たゞ今母の疑ひも、我が悪名も晴れたれば、これを冥途の思ひ出とし、跡より追っ付き舅殿、死出三途を伴はん』と突っ込む刀引き廻せば」 『仮名手本忠臣蔵』「勘平腹切の段」の場面。 主役は早野勘平、萱野勘平のモデルですね。 高校卒業と共に浄瑠璃、義…

まほろ駅前多田便利軒 三浦しをん

三浦しをんの直木賞受賞作品。 なかなか面白い作品だが特別感想文を書くほどではないような気がする。 便利屋を営む中年男に舞い込む仕事を巡ってのトラブルがメイン。 寧ろ、この手の作品は映画で見た方が面白いかも知れない。 文芸作品というのは、先に原…

ダブル・ファンタジー 村山由佳

この人、何年か前に一度だけテレビで見たことがある。 失礼ながら小説家にしては可愛い人だという印象を持ったが、一度も作品を読んだことがない。 恋愛小説の名手らしいが、あまり愛だ恋だという本は好きな方ではないので、これまで遠慮してきたが、一枚の…

定年オヤジ改造計画 垣谷美雨

唐突だが、夫源病という言葉を聞いたことがあるだろうか? 一般的にあまり聞かない単語たが調べてみると確かにある! 読んで字の如しというか、夫が原因の病気らしい。 定年後の夫を粗大ごみと呼び、熟年離婚が叫ばれて久しいが夫源病なる単語に興味を持ち、…

死んでいない者 滝口悠生

毎度のことながらどうも芥川賞受賞作とは相性が合わない。 古くは尾崎一雄の『暢気眼鏡』、庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』、または村上龍『限りなく透明に近いブルー』、池田満寿夫『エーゲ海に捧ぐ』等々。 ただ、松本清張の『或る「小倉日記」伝』はい…

ホテルローヤル 桜木紫乃

第149回直木賞受賞作。 タイトルから想像するに『ホテルローヤル』に来る客のそれぞれが抱える胸の裡をドラマ仕立てで紡ぐ連作短編集ようなものかと思っていたが少し違った。 ホテルローヤルで起こる七つの物語だが時系列的に過去に遡るように展開されてい…

乳と卵 川上未映子 

この作品を芥川賞に持ってくるところが選考委員会の御目が高いところなのか私の御目が低いところなのか悩ましい。 改行なしで読点によって区切られ延々と続く文体は情景描写なり思考の連続なりで会話というのが殆どない。 豊胸手術を受けることに悩み続ける…

想像ラジオ いとうせいこう

余談だが、以前、CSテレビで桑田佳祐といとうせいこうの対談を見たことがある。 その時の話しによると、何でもいとうせいこうは極めて初期の段階からサザン応援団の会員らしい。 まあそれはともかくこの小説。 難解とまでは言わないが冒頭からやや解りにくい…

昨夜のカレー、明日のパン 木皿泉

以前、直木賞を取材した番組をそれとなく見ていたら、私の知らない女流作家がこんなことを言っていた。 「今の時代、直木賞か本屋大賞の何れかを獲らないと絶対だめ」 つまり話題性がないと売れないということらしいが、時、恰も又吉君の『火花』が売れてい…

家族はつらいよ 小路幸也

30年程前のことだが、名古屋駅近くのローソン店内でレジ前に並んでいた山田洋次監督に声を掛けたことがあった。 ほんの少し立ち話しだけだが、やはり相手が相手だけに印象深い。 だからというわけではないが、最近は頭痛、肩こり、樋口一葉じゃないが、肩の…

コンビニ人間 村田沙耶香

まあ、こんなことを言っては失礼な話しだが、そもそも、芥川賞受賞作に名作というものがあるのだろうか。 私も全ての作品を読んだわけではないので一概に断定できるわけではないが、どうも物足りなさを感じる。 これで終わり! みたいな読後感をいつも味わう…

こちらあみ子 今村夏子

文学作品、特に感動小説などと言われるものは読む年齢によって受け止め方も違ってくるのだろうか。 昔、『二十四の瞳』を読んで感動のあまり小豆島まで行ってしまったことがあるが、 60を超えた今、初めて『二十四の瞳』を読んだとしたら果たしてあれほどの…

火花 又吉直樹

研ぎ澄まされた感性というのは高価な濾過器みたいなものだろう。 飲むに値する清涼飲料水を常に提供するだけの装置を兼ね備えているわけだが、これが芸術家の濾過機となると、清濁併せ呑ませる奇怪な濾過機を必要とするから一般販売はしていない。 才能が濾…

君の膵臓をたべたい 住野よる

テレビ欄や本の帯などで最近よく目にする「必ず」というフレーズ。 曰く。 「必ず泣ける本」 「必ず泣ける映画」 「必ず泣ける曲」 そう聞いただけで引いてしまうのは年齢の所為なのか性格なのか。 私は、この歳になるまで小説で泣いたことは3回しかない。 …

本日は、お日柄もよく 原田マハ

昨今、よく聞かれるところの「お涙頂戴」ありきのキャッチコピーは、どうも違和感を覚える。 「涙腺崩壊」「号泣」「涙がとまらない」 まあ、それはいいとして今回の本、最近、よく聞く作家名なので、どんな本を書く人かと一読してみたのだが、『本日は、お…