愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

一読三嘆

幼年 田中冬二

幼年 柿の花咲いていたりけり そが下に幼きわれら散髪をする 機関車のやうに重きバリカンは 項にひんやりと冷たく触れ また何となく西洋のような匂いす やがて短く刈りあがりしに 母来たりて青き頭を撫し 胸をはだけ乳を滴らし呪して 虫に刺さるるなかれ 風…

蛸章魚願開運陰陽抱叶

獅子文六『娘と私』にはこんなくだりがある。 「あまり夫婦がご無沙汰すると、仲が悪くなるといいますから私の方から、押し掛けるかも、知れません、よろしくて?」 戦前の夫婦関係のことはよく分らないが当時の婦人雑誌には、 「中年の妻は赤い長襦袢を着て…

野晒 北原白秋

明治45年7月5日、東京原宿在住の北原白秋は隣家の年上の人妻、松下俊子と関係を持ち、夫の松下長平から姦通罪で告訴された。 翌6日、白秋は俊子と共に逮捕、馬車で市ヶ谷の未決監に拘留される。 その後、詠んだ白秋の詩。 野晒 死ナムトスレバイヨイヨニ命恋…

小町針

裁縫で使う待針には穴がないらしいが、この待針の由来は小町針にあるという。 どういうこと? 昔の川柳に曰く いかさまの 元祖は 小野の小町なり どうも「百夜通い」という伝説にその由来があるらしい。 自分に思いを寄せる深草少将に小町が、 「百晩、家に…

晡下出社

永井荷風の『断腸亭日乗』には“晡下”という漢字が頻繁に出てくる。 この言葉は今の広辞苑にも載ってない難解な漢字で、類語として「晡時」という字なら載っているが「晡下」はない。 小津安二郎の日記には以下のような記述がみられる。 「晡下出社、別に用も…