愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

ミステリー(読書録)

ルビンの壺が割れた 宿野 かほる

映画にしろ小説にしろ、最近よく見かけるのが「衝撃のラスト」こんな文字に踊らされて読んでみたら、なんのことはない、そんなことかとガッカリさせられることはないだろうか。本書は専門家が読んでも「何とも分類しようない小説」「万華鏡のような作品だ」…

インビジブル 坂上 泉

昭和29年、大阪城付近で政治家秘書が頭に麻袋を被せられた刺殺体となって見つかった。大阪市警視庁が騒然とするなか、中卒の若手・新城は初めての殺人事件捜査に意気込むが、上層部の思惑で、国警から出向してきた帝大卒のエリート・守屋と組むことに。全て…

郵便配達は二度ベルを鳴らす ジェームス・ケイン

この作品は4度映画化されているらしい。中でも1981年:ボブ・ラフェルソン監督、ジャック・ニコルソン、ジェシカ・ラングの作品が有名かと思うが私は観ていない。それにどういう訳か作品中に郵便配達は登場しない。誰だって郵便配達が殺人事件を起こすと思う…

絶唱 湊 かなえ

五歳のとき双子の妹・毬絵は死んだ。生き残ったのは姉の雪絵。奪われた人生を取り戻すため、わたしは今、あの場所に向かう「楽園」。思い出すのはいつも、最後に見たあの人の顔、取り消せない自分の言葉、守れなかった小さな命。あの日に今も、囚われている…

元彼の遺言状 新川帆立

【2021年・第19回「このミステリーがすごい! 大賞」大賞受賞作】 という見出しに惹かれて読んでみたが、どうなんだろうかこれは。 犯人は狭い人脈の中に潜んでおり、入り組んだ家族関係。 あまり好きになれない組み立てだな。 ミステリーの中には時に期待外…

「グレート・ギャツビー」を追え ジョン・グリシャム

サスペンス模様に始まり、長い人間ドラマがありミステリーとなって終結していくような本だが、それぞれの感想を読んでいると、かなりの落差があるようだ。「面白かった」から「つまらない」まで。グリシャムの話題作を村上春樹の翻訳で。私としては4人で会話…

満願 米澤穂信

山本周五郎賞受賞、直木賞、このミステリーがすごい! 1位など三冠を受賞した、夜警。死人宿。柘榴。万灯。関守。満願 の6編からなる話題作なので読んでみた。 確かに上手い起承転結で面白いが、ちょっと出来過ぎかなと思うような結末などもあるが、確かに売…

告白 湊 かなえ

本書はミステリー仕立てになっているが、それとは知らず読んだ私には予想外の本だった。 構成からして意外で「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームで…

バスカヴィル家の犬 コナン・ドイル

口から炎を吐く、という魔犬の伝説が伝わる富豪のバスカヴィル家で、当主のチャールズ・バスカヴィル卿の死体が、屋敷の敷地内の小路で発見された。死体に暴行を受けた痕はなかったが、その顔は苦痛にゆがんでいて、表向きには心臓発作による病死と発表され…

黒いカーテン ウィリアム・アイリッシュ

帯に「名著復活」なんて書いてあると、つい買ってしまう。 一体、いつの本かと奥付を見れば初版が1960年2月10日とある。 これまた随分古いものだが、果てさて、本当に名著なのかどうか御覧じあれと謂わんばかりに試される吾みたいなものか。 ストーリーとし…

罪の声 塩田武士

グリコ・森永事件を題材に描かれた小説だが、ノンフィクションの中に創作を交えたようなものなのかよく解らなかった。 帯には第7回山田風太郎賞受賞作。「週刊文春ミステリーベスト10」第1位、本屋大賞第3位。圧倒的な取材と着想で、昭和最大の未解決事件を…

幻の女 ウイリアム・アイリッシュ

『ゴヤ』を少し中休みして海外ミステリーを一冊挿入することにした。 妻と一緒にショーを見に行くはずだったある男、直前になって喧嘩、口論、発奮、家を飛び出し、始めてのバーに入る。 見知らぬ女を見つけ、出来れば一緒にショーを見に行くつもりと決めて…

手紙 東野圭吾

読み進めて行く中で、どのようなラストが待っているのか考えていたが、特別強引な手法で結末を向かえるような形でないところがいい。特段、ハッピーエンドでもなく、主人公が今後どうなって行くのかとも設定されていない。 設定は加害者の家族、この場合は弟…

完全なる首長竜の日 乾緑郎

以前はよくCSテレビで「このミステリーがすごい」の書評会だったか選考会だったか、そんな番組を好んで見ていたが最近はついぞ見なくなって久しい。 この本は第9回大賞を満場一致で授賞した大作だというので興味がわき読んでみたが、ミステリーと言っても殺…

真夏の方程式 東野圭吾

確かに面白い! 絡み合う人間関係がどう決着点をみるのか終盤は頭の中を整理しながらゆっくり読んだ。 話しは常に主人公を中心に展開していくのではなく、登場人物それぞれの視点で進められ、言うなれば全員が主人公のような設定。 終始、飽きさせないストー…

スマホを落としただけなのに 志駕 晃

今でこそ私も偉そうにパソコンだスマホだと使っているが、その実、全くのド素人で、ちょっと専門的なことになると直ぐ人に泣きつく情けない奴なんです。 しかし著者はというと、今そこにある危機、いやいや機器に滅法強く、本書はハッキングの怖さ、パスワー…

白夜行 東野圭吾

最近の映画は暴力シーンや殺害場面など実にリアルに描かれているため、時に目をそむけたくなるようなことがあるが、小説の場合はあくまでも活字なので、ノワール小説も苦もなく読める。 あくまでもフィクション、しかし、ノンフィクションやルポルタージュと…

テロリストのパラソル 藤原伊織

江戸川乱歩賞と直木賞の同時受賞はこの作品を於いて他にないらしいが、そこまで言われたら、いったいどれだけ面白いのってなわけで私も手を出してしまった。 作品自体は95年と最近のものではなく作者も既に故人となっている。 事件発生から解決までの時間は…

さよならドビュッシー 中山七里

第8回『このミステリがすごい!』大賞受賞作。 この人のピアノ演奏を絡ませた作品の特徴は演奏技術を文章として起こせるところ。 音符を文章化する技量は並大抵ではない。 目に見えない音を何ページにも亘って恰も小説から聴くように書く。 ミステリーであ…

青い炎 貴志祐介

知らなかったがミステリーの分野には「倒叙推理小説」というジャンルがあるらしい。 倒叙推理小説? 解説によると。 普通のミステリーは、まず事件が起こり、警察あるいは探偵役が捜査に乗り出し、犯人の行動や動機を推理して事件を解決する。しかし、倒叙も…

九月が永遠に続けば 沼田まほかる

本書はデビュー作にして第五回ホラーサスペンス大賞受賞作で著者56歳の作品。 解説者はこのように書いている。 無論、どの賞も建前としては作者の年齢などは考慮しないことになっているけれども、現実には作者の年齢、筆歴などは多少評価に関係してくるもの…

どこかでベートーヴェン  中山七里 

中山七里だろうが箱根七里だろうが拙者のあまり預かり知らぬ作家なのだが、これまでに2冊の関連本を読んでいる。 ピアニストの岬洋介が難事件を解決する『さよならドビュッシー』と『いつまでもショパン』だが、この作家、よほどクラシックの造形が深いのか…